冴えないおやじが暴れる、それだけで爽快。
『Mr.ノーバディ』
一見してごく普通の中年男が、世の中の理不尽に怒りを爆発させて大暴れし、やがて武装集団やマフィアを相手に激しい戦いを繰り広げる姿を描いた痛快ハードボイルドアクション。
「ジョン・ウィック」の脚本家デレク・コルスタッドと製作デビッド・リーチが再タッグを組み、人気テレビシリーズ「ベター・コール・ソウル」の主人公ソウル・グッドマン役で知られるボブ・オデンカークが主演を務めた。
郊外にある自宅と職場の金型工場を路線バスで往復するだけの単調な毎日を送っているハッチは、地味な見た目で目立った特徴もなく、仕事は過小評価され、家庭では妻に距離を置かれて息子から尊敬されることもない。
世間から見ればどこにでもいる、ごく普通の男だった。
そんなハッチの家にある日、強盗が押し入る。暴力を恐れたハッチは反撃することもできず、そのことで家族からさらに失望されてしまう。あまりの理不尽さに怒りが沸々とわいていくハッチは、路線バスで出会ったチンピラたちの挑発が引き金となり、ついに堪忍袋の緒が切れる。
監督は「ハードコア」のイリヤ・ナイシュラー。共演に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のクリストファー・ロイド、「ワンダーウーマン」のコニー・ニールセンほか。
もうこれは観るからに爽快でした。
ジョンウィックの脚本家ということもあり、痛快なのは想定していたんですが、予想以上の爽快さ。
冴えないおやじが力で捻じ伏せる。本作のツボな所はその設定や演出じゃないでしょうか。
普通こういう話の場合、一見冴えないと思っていた人間が圧倒的にヤバいやつだったというのが多いと思うんですが、それが微妙にズレている。
ヤバいやつだったというのは合っているんですが、圧倒的に強いわけでも無く、割とやられます。そういうところが逆に最高で手に汗握る。
やられるところはやられるし、フィジカル的な強さも超人というほどでもない。なのに結果的には超人だし、常人では出来ないことの数々。
凄みを通り越して笑えるような展開もあって、ドキドキとハラハラ、そして笑いも堪え切れない。
冴えないおやじが最高なら、その親父も最高なわけで、出てくるキャラは皆最高。
美術や小物使いも凝っているし、スパイものにあるような小技も効いていて良い。
やはり見逃せないのがそのアクションシーンで、ジョンウィック同様、切れの良いアクションと容赦ない暴力のオンパレード。
カットもメリハリがあって、見せるところはテンポ良く、背面から撮るような主観ショットはスリリングに。笑えるようなカットも多くて、個人的に親父の部屋でのショットガンシーンは部屋で観ていた西部劇の含み込みで見事でした。
上映時間も90分弱と観易く、鬱屈とした日々にカウンターを食らわせるようなスカッと感で、とにかくあっという間の映画体験でした。