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アメリカン・ユートピア

事実のみの過去よりも確実な未来という発想。

アメリカン・ユートピア

ポスター画像


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元「トーキング・ヘッズ」のフロントマンでグラミー賞受賞アーティストのデビッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に作られたブロードウェイのショーを、「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が映画として再構築。

同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲など、全21曲を披露。

バーンは様々な国籍を持つ11人のミュージシャンやダンサーとともに舞台の上を縦横無尽に動き回り、ショーを通じて現代の様々な問題について問いかける。

クライマックスでは、ブラック・ライブズ・マターを訴えるジャネール・モネイのプロテストソング「Hell You Talmbout」を熱唱する。

パントマイムや前衛パフォーマンスの要素も取り入れた斬新な振り付けを手がけたのは、過去にもバーンの舞台を手がけたアニー・B・パーソン。ブロードキャスターピーター・バラカンが日本語字幕監修を担当。

トーキングヘッド自体はリアルタイムでなく、正直数曲知っている程度。

それでも各アーティストが受けている影響力の高さや映画での引用などからもその存在の大きさは理解しているつもりでしたがそれは間違いで、本作を観てその全てが吹っ飛ぶくらいに衝撃を受けました。

別に過度に過激だったわけでも楽曲が素晴らしすぎたわけでもなく、ただただその存在感とクリエイティブ性に圧倒され飲み込まれました。

コロナ禍でライブに行けなくなった今、こんな形で『ライブ』の必要性、肉体的な体験の重要さを改めて感じます。

音楽における詩的センスとメロディセンス、どちらもあるに越したことはないと思うのですが、それを用いて、社会的、文化的文脈と照らし合わせながらこうした作品を作るのは本当に凄いと思う。

楽曲の選定チョイスもさることながら、その合間で挟むマイクパフォーマンスが見事。それに加えて演出の素晴らしいこと。

人が最も気になるのは他人であるということを突き詰めた結果としての人そのものを見せるというライブパフォーマンス。

確かに他に無いが故に集中が注がれ体感できる。それを恐らくデヴィッドバーンの中での時系列に表現していくことでラストのカタルシスまで持っていく構成が素晴らしいからだと思う。スパイクリーの作品は音楽とのマッチングが良いものが多いと思っていたがここまで相性が良いとは。

生きることは改革していくことであってそのためには繋がりが必要だということ。そんな見えない道筋を見せてくれたところで未来はわかっていると告げてくる。考えてみれば過去のことの方がわかっているようでいて忘れていて、未来のことの方がわからないようでわかっている気がする。そう考えると動き出すのはいつからでも遅く無い。

60歳後半になる彼が示してくれているこの感覚は自分自身の諦めを少しではあっても溶かしてくれるきっかけになると感じた。

それにしても奴隷から解放された黒人のために設立された大学でのマーチングをモチーフにしたグレーのスーツ。この統一された衣装のセンスのいいこと。

加えてのこの文化的背景とこのフィルムの脚本構成上のそれを思うと本当に感服する。

3ボタンのボックス型スーツを着たいと思った、そんな映画でもありました。

とにかく今の時代に必要なモノが詰まった作品だと思うので是非音の良い劇場で。