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街の上で

生きる上での心地良さ。

『街の上で』

ポスター画像


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「愛がなんだ」の今泉力哉監督が、下北沢を舞台に1人の青年と4人の女性たちの出会いをオリジナル脚本で描いた恋愛群像劇。

下北沢の古着屋で働く青年・荒川青は、たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったりしながら、基本的にひとりで行動している。生活圏は異常なほどに狭く、行動範囲も下北沢を出ることはない。

そんな彼のもとに、自主映画への出演依頼という非日常的な出来事が舞い込む。

「愛がなんだ」にも出演した若葉竜也が単独初主演を務め、「少女邂逅」の穂志もえか、「十二人の死にたい子どもたち」の古川琴音、「お嬢ちゃん」の萩原みのり、「ミスミソウ」の中田青渚が4人のヒロインを演じる。成田凌が友情出演。

今泉監督作品って本当にフィーリングにあっているというか、何かが起こるわけでは無いのに共感できるというか、観ていてとにかく心地良い作品が多い気がします。

その意味で言うと本作もかなりハマった。

設定自体にハマったということもあるし下北沢という街が良かったのもある。学生時代に興味を持った古着や音楽、当時そういったカルチャーといえば下北沢がメインだったわけで、良く行きました。

何もかもが新鮮に見え、いる人がオシャレに見えた。ある店も、売っているものも、売っている人も。

そういったものから色々な刺激を受け、感じ、取り入れていく感覚は今となっては絶対に味わえない感覚だし、街自体の変遷もそう。

そんなまさに街の上で起こるなんでもない日常が切り取られていて、生活しているような気にすらなれた。

あの時代、あの街自体の存在がそうなんだろうけど、とにかくデジタルで無くフィジカルに生きるということについて考えさせられるし、その心地良さというかスローな日常に癒される。

いつも通り群像劇なのは変わらずで、最後に収束していく感じもそのまま今泉作品。ただ、そこに存在する人の笑える日常とやり取り、絡み合う人間模様が過去作の中でも最高にツボ。

それを可能にしてるのは間違いなくキャストの存在でしょう。主人公演じる若葉竜也が見事なはまり役で、間違いなく下北の住人でしょと思いたくなるような佇まい。他の作品でも様々な役を演じていて魅力的だなとは思っていたんですが、本作はダントツで好きな配役でした。

冒頭のシュールな雰囲気に始まり、脱力したような演技が見事にキャラとマッチしていました。

その他のキャストも絶妙過ぎて、全員最高。イハを演じた中田青渚は関西弁の調子も合わさり可愛すぎる。

個人的には冬子を演じた古川琴音が最近好きで、コントが始まるでも存在感があって、本作でも良いスパイスとして機能していた気がします。

共同脚本を担当している大橋裕之の存在も多分にあると思いますが、とにかくシュールで笑える。爆笑ではないのだけど確実に笑えるというバランス感が見事だと思う。

アドリブがほとんど無いらしいので、そう考えると脚本の出来がかなり良いんだと思います。

観ていて思うのが『人のつながりの偶然性と大切さ』今のタイミングで観るのと数年後、数十年後に観るのでは、そのつながりの違いであったり、街自体の変化であったりと色々な違いに気付かせてくれる映画な気がする。

あの街、あの時、あの人、あの店、そんな一瞬を切り取ったような作品。そこにある種一瞬の儚さとして存在する恋模様を描くことで見えてくるその感覚も面白い。

後半にある雪の青への「好き」というシーン。あの場面は自分の中の映画史上トップ3に入る告白シーンでした。

そこまでのゴタゴタと気持ちの高まりが一挙に押し寄せてくる感じ。そっけないシーンに見えて、自分の中ではグッとくるシーンでした。

その他のシーンも観るたびに色んな発見が出来るような、新しい感情に気付けるようなそんな日々の日常と向き合わせてくれるような作品な気がします。