恐怖から能力バトルへ。
『カルト』
「オカルト」「テケテケ」の白石晃士監督が、3人の女性タレントが陥る恐怖を描いたホラー。
人気タレントのあびる優、岩佐真悠子、入来茉里の3人は、霊にとり憑かれたというある母娘の除霊をする番組のレポーターを務めることに。
しかし、母娘にとり憑いた霊は強力で、訪れた霊能力者たちは次々に倒れてしまう。最強の霊能力者と言われるNEOが除霊に挑むが……。
あびる、岩佐、入来はそれぞれ本人役で出演。
やっぱり白石監督のこういった作品は怖くて面白くて、独特で最高ですね。
導入から不安定な画角と画面の四隅までなんとなく気を抜けない作り、ここに日常的なトーンが合わさっての不思議な緊張感から視聴中ずっと気が抜けません。
それでいて、夏はこういうのが観たいんだよ、と思ってしまうほどあっという間の映像体験。
画面越しに伝わる緊張感が絶妙に丁度良いと言いますか、その塩梅が上手いからこそ作品の吸引力が強いんでしょうね。
相変わらず、「おわかりいただけましたでしょうか」的な演出もふんだんに登場しますし、これが怖いのなんのって。まぁそこの説明を丁寧にし過ぎな感もありますが、それでも怖いしゾッとする。
起きていることはまさにタイトルの通り。そういった怪奇現象のお話なんですが、そこに変な思惑が入り込まないと言いますか、うがった見方をせずに観れてしまう。
一見すると、こんなこと起きないでしょとか、これはやり過ぎでしょ、と思う事も出てくる。それなのにそこにフォーカスがいかないというか、出来事のみにフォーカスできるような作りになっている。
これこそが白石監督独特のバランス感覚に基づいた映像の肝なのかと。
出ている演者も絶妙なリアリティがあると言いますか、ありそうだなと思ってしまうような雰囲気がある。設定自体もありそうだなと思ってしまうところが多分にあり、実に良く出来ている。
あと何と言ってもカメラワーク。
これも怖さとリアリティの原動力になっていると思っていて、不安定で脱構築的。ホームビデオでも見ているような感覚があるんだけど、それだけにとどまらないというか、それだけだともっとチープに見えてしまうと思うんですよね。
そこに定点カメラや固定カメラ何かを組み合わせたり、寄りや引きの構図を足し算引き算することで成り立つ感じ、これもただ観ているとそこまで手の込んだ作りを感じさえないところが素晴らしい。
こういう細部に手の込んだ演出があるからこそ作品自体のクオリティが担保されるんじゃないでしょうか。
とにかく百聞は一見にしかず。
普通に何も考えずに観るにはちょうどいいですし、本当にさくっと観れてしまいますので、是非。
断片的にしか観たことが無かったんですが、ちょっと夏だしこういったホラーを楽しんでいこうかと思います。夏は終わりに近づいていますが、こういったところで残暑を楽しむのもありじゃないでしょうか。
では。