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BLUE ブルー

本当に凄いということは。

『BLUE ブルー』

ポスター画像


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「ヒメアノ~ル」「犬猿」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本で、ボクシングに情熱を燃やす挑戦者たちの熱い生き様を描いたドラマ。

ボクサーの瓜田は誰よりもボクシングを愛しているが、どれだけ努力を重ねても試合に勝てずにいた。一方、瓜田の誘いでボクシングを始めた後輩・小川は才能とセンスに恵まれ、日本チャンピオンに王手をかける。かつて瓜田をボクシングの世界へ導いた初恋の女性・千佳は、今では小川の婚約者だ。強さも恋も、瓜田が望んだものは全て小川に奪われたが、それでも瓜田はひたむきに努力し続ける。

しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田はこれまで抱えてきた思いを2人の前で吐露し、彼らの関係は変わり始める。松山ケンイチが主演を務め、後輩ボクサーの小川を東出昌大、初恋の人・千佳を木村文乃、新人ボクサーの楢崎を柄本時生が演じる。

やっぱりカッコいい映画は好きだ。

ここで言っているカッコ良さっていうのは、客観的なものさしで測れるそれでは無くて、あくまでも自分がカッコいい、バックボーンやストーリーの中で思うカッコ良さ。

その意味で、本作の主人公瓜田は最高にカッコ良かったし、松山ケンイチ史上最もカッコ良かった。

それにしてもこの吉田監督は本当に痛切なテーマを扱うというか、突き付けてくる映画としてのフォルムがエゲつなく痛々しい。

本作でもその痛々しさというのは健在なんだけど、あくまでもそれは必要悪とも言えるような痛々しさ。人生ってそんな生易しいものじゃないし、誰もがその人なりに苦悩を抱え、葛藤しているんだなという当たり前の苦悩を痛烈に描いている気がする。

好きなものと出来ることは実際違うし、好きな人と好かれる人も当然異なる。思っていることと行動できることも違うわけだし、期待や願望と現実は異なる。

中にはそれが思い通りに進んでいく人もいるのかもしれないけど、それも結局一生続くようなものでは無いはず。

その辺のバランスというか見せ方と言うか、切り取り方が実に絶妙で、突き刺さるように響いてくる。

映像的なそれもあって、どこかひんやりとしたような彩度の薄い色調、明るいシーンでも何となく空気の重さを感じるような画作りは作品自体のテーマ性ともよく合っている。

そんな本作の主人公、松山ケンイチ演じる瓜田。全てにおいて思うように進んでいないというか、上手くいっていることも希望も含め、一切が無い気がしてしまうように見えてくるキャラクター。

当然、それだけであれば共感もしないんだろうけど、それでいてメチャメチャお人よしなところが無性に気になってしまう。

その部分があることで、非常に魅力的に映ってしまうと言いますか、なんていうんだろう、根本的に嫌いになれない人っているじゃないですか、そんな感じの人物描写なんですよ。

どんなに馬鹿にされても悔しくてもそれは表に出さず、あくまでも自分の内に留め続ける人ってカッコいいじゃないですか。少なくとも自分にとってはカッコいい。

大好きなボクシングでは負け続け、好きな人にも振り向いてもらえず、生活も決して裕福では無く、ボクシング以外は何も無いと言ってしまうような人物。

なのにその好きなボクシングでも一向に目が出ずって。可哀そ過ぎますよ。

こういうことだけ書いていると希望が持てない気がしてしまうんですが、観終わった後にその感覚は全く無いんです。

そりゃ観てる最中にはこれはボクシング映画なのにそういうカタルシスは無いのか、などと思ったりもしましたし、作中でもこの男の向かう先はどこなんだろうとか思ったりもしましたが、それら全てを巻き込んでラストには一番愛くるしい男へと変わっていく。

まずもってこの演技と佇まいを体現できる松山ケンイチという俳優は本当に素晴らしい。最初に観たのはデスノートだったような気がするんですが、年を重ねるごとに存在感が大きくなっているように思いますし、纏う雰囲気がどんどんカッコ良くなっている気がする。

あんなに屈託無い表情をしていたかと思えば、虚無感のあるような表情、かと思えば試合等での真剣な表情と、ボーダーの無い表現をリアルに、違和感無くこなしてしまうというのが凄い。

他の演者も同様で、木村文乃にしろ、柄本時生にしろ、東出昌大にしろ。

この三人もそうだし、他の出ている演者も雰囲気があるような、ある種独特な俳優が多かったこともあり、一層この映画としてのリアリティの解像度が上がっていたように思います。

ボクシング映画的な高まりは無いのかと言えばそういうわけでも無く、試合や練習含め、意外としっかりと描かれている。

特に試合のシーンのカット割りはテンポ良いですし、緊迫感のある寄り、引きのバランスが絶妙。それ以外のシーンでも手持ちカメラが多用されている印象で、独特なリアリティ、雑然とした雰囲気なんかも良く出ている。

特に好きなシーンが2つあって、まず東出演じる小川と対戦相手の攻略について話すシーン。

小川の家に突如訪れ、動画を見ながら話し、シャドウをするんですが、この熱量と否応なく身体が動き、話す語気も上がってしまう感じ。あの二人の感じが凄く良いんですよ。なんか好きなこと話してますって感じが出てて。

それから終盤の瓜田が市場でステップを踏んでいるシーン。

終盤で瓜田が市場で働きだし、その合間で自然とボクシングのステップを踏んでしまうんですが、画としては断トツトップで好きなシーンかと。

カメラワークが素晴らしく、足元を中心に、日差しをバックにステップを踏むところを寄り目で撮る。この美しさと、足元で語るボクシング愛。市場特有の濡れた地面や長靴といった部分も込みで、瓜田のボクシング愛をまざまざと見せつけられた気がした名シーンでした。

とにかく個人的にこの映画で伝えたいことは二つ。

一つは圧倒的にカッコいい瓜田の生き様。

二つ目は、葛藤を抱えつつも前を向いて生きていく術

個人的にはこの二つがあれば十分と思える、最高にヘビーで日々に彩りをもたらしてくれるような作品でした。

では。