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パーム・スプリングス

生きる上で本当に必要なものとは。

『パーム・スプリングス』

ポスター画像


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カリフォルニアの砂漠のリゾート地パーム・スプリングスを舞台にしたタイムループ・ラブコメディ。

パーム・スプリングスで行われた結婚式に出席したナイルズと花嫁の介添人のサラ。ナイルズのサラへの猛烈なアタックから2人は次第にロマンティックなムードになるが、謎の老人に突然弓矢で襲撃され、ナイルズが肩を射抜かれてしまう。

近くの洞窟へと逃げ込むナイルズとサラは、洞窟の中で赤い光に包まれ、目覚めると結婚式当日の朝に戻っていた。状況を飲み込むことができないサラがナイルズを問いただすと、彼はすでに何十万回も「今日」を繰り返しているという。

ブリグズビー・ベア」のアンディ・サムバーグが主人公サム役を演じ、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に出演したクリスティン・ミリオティ、「セッション」でアカデミー助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズらが顔をそろえる。

監督は本作が長編監督デビューとなるマックス・バーバコウ。

ポスタービジュアルとバカンス型タイムループというフレーズだけで惹きつけられておりました。

主演もアンディサムバーグということで、こういったコメディ系の人が主人公の作品って意外に好きなんですよね。バランス感が絶妙というか、物語の展開にも強弱が付く気がして。加えてクリスティンミリオティもアマプラ作品、『モダン・ラヴ』で観て以来良い役者さんだなと思っていました。JKシモンズは言わずもがな。

そんな本作ですが期待を裏切らない新しいタイムループの形を見せてくれ、本当に期待以上でした。

ループ物は『恋はデジャブ』や『ハッピーデスデイ』など有名作品もありますが、大体のものはそこまでポジティブでないというか脱力感は無いものがほとんどな印象。

本作ではその脱力感が半端無くて、ポスタービジュアルを見てもらえばわかるバカンス感。この世界で本当にネガティブ要素あるのかと思わせるような世界観の中で繰り広げられる展開がかなりテンポも良くツボ。

それを実現しているのが役者とそのキャラクターだと思っていて、出てくる人物たちの作品内におけるリアリティが素晴らしい。

作品内におけるというところが肝で、それにより実存感とライド感が増す。

普通だとループ物はどうやって脱出するかとか悲観的に考える主人公が多い中で、本作はその状況を逆手に無計画に楽しむ。だって毎日繰り返されるんだから失敗も恐れないし、普段なら考え付いても行動しないことでもやってしまう。

そこまではまだ考えられる範疇なところに、別の人物が同じループに入ってくる。

その中で現状を楽しみ、謳歌するわけだけど、それで終わらないところも良い。サラも途中までは右往左往しつつも、繰り返される日々に対して嫌気がさしてくる。そこからは変化が訪れる日々を望み、行動していく。

この行動するというのも斬新で、実学としての量子力学を学び、現実の問題としてループから抜け出そうとする。

ここまで観た時に自分はどっちを望むのかなと思って観ていて、『繰り返される故に失敗やストレスを感じない単調な生活』と『嫌なことはあるかもしれないけど変化がある日常』。そう考えた時にどっちの世界の良い部分も頭の中でフィードバックし、すぐには答えが出ない。というか答えは永遠に出ないんじゃないかと思うほど、自分の生きる意味や実存の感覚を刺激された。

本作ではその辺のカタルシスも終盤に回収されるが、自分の中での問題としては未だに答えが出ていない。

一つだけ言えるのは誰とも関わらず、誰とも何も共有せず生きるというのは不満が残らないという点で一見良く感じるものの、それ自体が不満や虚無に繋がり結果として破滅してしまうんじゃないだろうかと思った。それをよく表していたのが、恐竜を共に目撃するシーンだし、その後の展開もそう。

ループ物として傑作だと思うし、ディティールを観るのも面白い作品かと。ドーナツやピザ、プールに浮遊する理由、アロハ姿で結婚式、単純に面白いシーンが多い作品だと思うので是非この鬱屈としたコロナのタイミングでバカンスしてみてはどうでしょうか。