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胸騒ぎのシチリア

空気感のパッケージが本当にピカイチ。

『胸騒ぎのシチリア

ポスター画像


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ミラノ、愛に生きる」のルカ・グァダニーノ監督が同作に続き、ティルダ・スウィントンとタッグを組んだ人間ドラマ。

1968年製作のアラン・ドロン主演、ジャック・ドレー監督によるフランス映画「太陽が知っている」をリメイクした。

世界的ロックスターのマリアンは、痛めた声帯を癒すため、年下の恋人のポールとシチリアのパンテッレリーア島で静かな時間を過ごしていた。しかし、マリアンの元彼でカリスマ音楽プロデューサーのハリーが、セクシーな娘ペンを連れて、マリアンのもとへ押しかけてくる。ハリーは、マリアンとの復縁を目論み、一方のペンはポールへの好奇心を募らせる。さらに、バカンスが台無しになったマリアンの身に思いもよらない事件が待ち受けていた。

主人公マリアン役をスウィントンが演じ、レイフ・ファインズ、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のダコタ・ジョンソン、「君と歩く世界」のマティアス・スーナールツが共演。

夏までとっておいた甲斐がありました。

この作品は絶対に夏の日中に観たいなと思っており、ついに先日タイミングが合い、視聴しました。

舞台はシチリア、グァダニーノ監督が空気感を切り取ると、こうも上手く切り取れるのかと改めて驚かされることに。

まるでその場にいるような高揚感と温度感。町の喧騒感や風までも感じるような画作り。色のトーンなんかも自然で、メリハリのある濃淡も見事。小物使いや美術含め、とにかくその画作りに感服しました。まぁ個人的に好きな画作りなのかもしれませんが。

とはいえ、コロナ禍で旅行などに行けない状況において、この映画を観ればその感も少しは和らぐことでしょう。というか自分はかなり和らぎました。

テーマ自体も非常に興味深く、『欲望』というものに対してフォーカスされている。

バカンスと男女、それに最高のロケーションが揃えば、それは何か起こるよね、と言わんばかりのシチュエーション。

海は綺麗だし、陽の光もそう、町並みもこれぞ地中海という雰囲気で、食べ物やお酒も美味しそう。もうこれは疑似旅行ムービーと言っても過言ではないかと。

ただ本作の魅力はそういったところ以外にも確実にあって、起きていること自体そのものよりも、表面化されない内なる衝動であったり、ロードムービー的に過ぎていく時間の経過そのものにある気がする。

非日常を日常的に切り取ることで浮き彫りにされる欲求そのものが面白いし、儚く、よりリアルに感じられる。どうしても日常だと当たり前に消化されたりがちだったり、日常に忙殺され通り過ぎていく事象。それが非日常になったとたんに目の前にそれ単体で現れてくる。その感覚が観ていて歯痒いし、憧れたりもする。

そんな旅行にまつわるあれこれが起きるのを時にスリリングに、時にハイテンションに、時にナチュラルに見せることで、本当に優雅な時間を過ごしている錯覚を受ける印象がある。

なんとなく観ていて心地良いなと思うだけでも十分だし、細部に気を留めて観ればそれはそれで発見がある。

作品内で一貫して精通している『欲望』というものが存在しているから成せることだと思うし、それは誰にでも内包している感覚だからだとも思う。欲望そのものの個々人の評価軸が異なり、果ては人生というものをどう捉えるかによっても変わってくるのが、この『欲望』というもの。

何を選び、何を我慢し、何に従うのか、ほんのちょっとの違いやシーンの違いでも捉え方や状況が変わってくるところが厄介だし、それも含めて選んでいるから結果が変わってくるとも言えるのかもしれない。

映画も何をいつ観るのかで見え方が大きく変わるように、本作も人間の抱える人間の内面の葛藤みたいなものを知るきっかけとして観るのは面白いと思う。

単に映像的に美しいのもかなりアドバンテージとしてあると思うので、この夏に昼間っから酒でも飲みつつ、涼しい部屋で観たら最高じゃないでしょうか。