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女性の知恵、男性の視点:『ビフォア・サンセット』続編が描く異なる恋愛視点

「ビフォアサンセット」

ポスター画像


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リチャード・リンクレイター監督がイーサン・ホークジュリー・デルピー主演で手がけた1995年製作の恋愛映画「恋人までの距離(ディスタンス)」の続編で、2013年製作の「ビフォア・ミッドナイト」へと続く3部作の第2作。

本作よりホークとデルピーも脚本に参加し、9年ぶりに再会した2人がパリの街で過ごすひとときを、ほぼリアルタイムで描き出す。列車の中で出会い、ウィーンで一夜だけを共に過ごしたアメリカ人青年ジェシーとフランス人女性セリーヌ

9年後、作家となったジェシーは新作のプロモーションのために訪れたパリの書店で、思いがけずセリーヌと再会する。

彼の新作は、ウィーンでのセリーヌとの出来事をつづったものだった。2人は再会を喜び合うが、一緒に過ごせるのはジェシーアメリカ行きの飛行機に乗るまでの短い時間だけ。街を歩きながら会話を重ねていく2人だったが……。

9年後。前作からそれだけの時が経ち、見た目だけでなく歩んできた人生も積み重ねられた二人。

そんな人間の歩みを垣間見る面白さが本作にはあるわけですが、そこに恋愛的な歩みも乗っかってくるからこの三部作は面白い。

20歳前半の恋愛と30代になってからの恋愛事情は当然違ってくるわけだし、環境や立場なんかも当然違ってきますよね。

それらを演者ともども実際に9年後に再現するわけだから、なんかこう、人としての深みだったり関係性の醸成を感じるわけですよ。

本作はビフォア三部作の第二作目。作品時間も81分と短くなり、そのタイム感もなんか二作目のテイストと合っている。長過ぎず、物足りな過ぎず。

この三部作自体が物語以上に会話劇で出来ていることもあり、本作でも数え切れない名言に溢れているんですよね。その中でも今の個人的に気になるいくつかを。

①「若いころは健康だったけど、すごく不安定だった」
確かにその通りで、肉体もそうだし、時間的にもそう。健康を保てる要素は多かった。なのに気持ちだったり先行きだったり、何なら日々の生活すらも不安定だらけ。ルーティーンが少なかったり、責任が伴わなかったり。だからというか、その場しのぎのことが多いんですよ。無理を強いても身体が動くから気遣わないし。この逆説的で深い問いは30代半ばになると刺さってくるわけです。

②「生きている限り思い出は変えられる」
思い出ってあくまでも過去の”思い”なんですよね。だから過去の”思い”を積み重ねそれらが現在や未来にも影響するし、関係してくる。一見すると過去だから変えられないと思ってしまう”思い”でさえ、今の”思い”を変えることで過去の認識も変えられるかもしれない。そう思うと中々ロマンティックじゃないですか。

③「女は知らないフリをするものなのよ」
これはわかっているようでわかっていないと知らされた感覚でした。実際、この作品の中でも出てくるのが二人の公園での出来事の話。最初セリーヌは本当に知らないor忘れていると思っていた話も実は詳細に覚えており、むしろ言わないことでの相手の反応や振る舞いを観察していたのかと思うと・・・。女性の認識やしたたかさがこういった部分に出てくるのかと思わされます。

④「若いときって、人生において出会うひとはたくさんいると思っている」

これも年を重ねるとそうでもないことがわかるし、尻つぼみ的に出会いが極端に減ってくるんですよ。単純な出会いというより、深く関わりあえる出会いが減ってくるイメージ。社会を知り、人を知り、自分を知ったからこそ変なフィルターを作ることで踏み込んだ付き合いが出来なくなる。これもあるあるですよね。でも劇中でこれを言葉にした時の余韻が良いんですよ。

そんなフリをする真意と考え方を見ると、序盤から終盤への流れも伏線に感じ、なんか、人との関り、異性との関りって深いものだなと思わされます。

そうした話のみで持たせる映画になっているんですが、本作で描かれる男女間の視点の違いみたいなものが非常に面白いんですよね。

序盤でのカフェでの会話がそれらを包括していて、「私変わった?」ではじまるところ。あぁ、女性はそういう部分を見ていて、男性はそういう視点なのかといった、日常でも間々あるであろうシチュエーションをこうした映画としての視点で見せられると妙に納得してしまう感じがあるし、そうしたやり取りが全てを物語っているような気もしてくる。

人と出会い、積み重ね、離れ、また出会い。そうした人との繋がりの中にこそ充足感のヒントは潜んでいるんだろうなと思わされます。

ちなみにこの作品一番のお気に入りポイントはラストシーン。

別にラスト自体の驚きが、といった展開では無いんですが、あの唐突さと潔さ、最高じゃないですか。

なんていうか絶妙なテンションを保ったうえでスッと暗転する感じ。この冒頭に書いた作品自体のやり過ぎなさがラストにすら表現されている気がして、とにかく美しい幕引きだなと。

気持ち良いんですよ。鑑賞後の余韻が。

これは是非味わってほしいですね。

では。