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秘密の森の、その向こう

夢見心地な中で、出会うもの。

『秘密の森の、その向こう』

ポスター画像


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「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、娘・母・祖母の3世代をつなぐ喪失と癒しの物語をつづった作品。

大好きだった祖母を亡くした8歳の少女ネリーは両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を片付けに来る。しかし、少女時代をこの家で過ごした母は何を目にしても祖母との思い出に胸を締め付けられ、ついに家を出て行ってしまう。残されたネリーは森を散策するうちに、母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会い、親しくなる。少女に招かれて彼女の家を訪れると、そこは“おばあちゃんの家”だった……。

本作が映画初出演のジョセフィーヌ&ガブリエル・サンス姉妹がネリーとマリオンを演じ、「女の一生」のニナ・ミュリス、「サガン 悲しみよこんにちは」のマルゴ・アバスカルが共演。2021年・第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。

ホント不思議な映画でした。

前作も評判だったようですが、それは観れておらず、なのでシアマ監督作品がどういった作風なのかがわからず観てきました。

率直な印象として、フランスらしい作劇で、美しい世界観。まあフランス映画と言えば浮かぶようなイメージはありましたが、これはそこまでフランスフランスしている印象では無い感じなので、毛嫌いしている人であっても、わりと気軽に観れる気がします。

そんな本作、あらすじも読まずに行ったんですが、予想以上にファンタジックな物語。

これは公式でも書かれているのであれなんですが、主人公である8歳の女の子が自分と同じ年の母親と遭遇し・・・という感じのストーリー。

これだけ聞くとありがちな設定にも思えるんですが、その撮影手法や設定、内包しているテーマ的なものが非常に独特な感じで、全編に渡って、何とも言えない浮遊感があるんですよね。

劇伴も素晴らしいですし、映像がとにかく綺麗なのも印象的。映っている山々の様子もそうですし、途中で出てくるピラミッド的な所への冒険も美しい。あそこのシーンは映画館ならではの映像、音響でした。

冒頭の長回しからもその美しさがありますし、カメラワークも相まってストーリー的にも映像的にも本当に綺麗に繋がれています。

これだけでも見る価値ありだなと思ってしまうんですが、全体を通しての空気感も抜群に澄んでいて良い。

心地良いという言い方が正解かもしれませんが、なんとも言えない気持ちにさせてくれるんですよ。73分という時間も丁度良いんだと思うんですが、長過ぎず、短か過ぎず、内容的な不定形さもあって、映画自体の輪郭がぼんやりとしたまま描き出されている感じが映画そのものの雰囲気と相まって。

内容的な朧げさや不確かさ、夢と現実を行き来しているような構成も見事じゃないでしょうか。実際に家を行き来し、カットも唐突に割るというカメラワーク、それも、そんな曖昧さを表現しているかのようですらある。

内容的なそれも、まさに『不確か』さそのもの。主人公である8歳の女の子は娘として登場するんですが、それも母親と父親にとってはという枠組みがあってのこと。

ここに同じ年齢の母親が出てきて、その母親(女の子からすると祖母)が出てくることによって、その関係性と自分という存在の不確かさは一層強くなってくる。

誰かと接する時って、無意識的に何かを演じているんだと思うんですが、それはその人やその場所での、自分との関係性があってこそできることであって、自然と無意識的にやっていると思うんです。これを、ある種役割的にこなしているというのが実際の個人なんじゃないかと。

そして、それを取っ払った時に残る、本当の自分とはどういったものなのか。これは他の作品にもあるようなテーマながら、本作で描かれる、ありのままの不確かさは何とも不可思議。

ラストを観た時、ある種独特な納得感に包まれてくるからそれもまた不思議なものです。

本作で出てくるマリアンのように、何かに疲れたり、悩んだりした時、それはその状況自体に行き詰っているだけであって、目線や関わり方を変えた時、それはまた違った見え方をしてくるのかもしれないですね。

そういったあらゆる物事すらも不確かなものだと考えると、人生は捉え方で変わるのかもしれません。

それをこういったファンタジックな世界で見せてくれるというのは素晴らしいものです。

では。