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心の準備はできていますか?笑いと恐怖が交錯するホラーコメディ『ボーはおそれている』

「心の準備はできていますか?笑いと恐怖が交錯するホラーコメディ『ボーはおそれている』」

ポスター画像


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「ミッドサマー」「ヘレディタリー 継承」の鬼才アリ・アスター監督と「ジョーカー」「ナポレオン」の名優ホアキン・フェニックスがタッグを組み、怪死した母のもとへ帰省しようとした男が奇想天外な旅に巻き込まれていく姿を描いたスリラー。

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。

共演は「プロデューサーズ」のネイサン・レイン、「ブリッジ・オブ・スパイ」のエイミー・ライアン、「コロンバス」のパーカー・ポージー、「ドライビング・MISS・デイジー」のパティ・ルポーン

マジで謎。

これがふさわしいとしか言いようの無い感覚。

「哀れなるものたち」もかなり不思議なテイストでしたが、これはその上をいく展開。だって、ストーリーラインが見えないんですよ。いや、正確には見えてるんですよ。ただの帰省なんだということは。

 

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けれども、なんだろうこの何もわからない感じ。

起きていることの辻褄が合わず、なんでそういうことになっているかが全く分からない。

家の鍵と荷物急に無くなるわ、変な裸の人に追われてるわ、風呂場に誰かいるわ、毒クモ出てくるわ、車に轢かれるわ、ペンキ飲んで死なれるわ、SEXして死ぬわ、刺されるわ。

もう挙げたらきりがないくらいわけのわからないオンパレード。

これが帰省なんですか。そう言いたくなるほどの帰省っぷり。

しかも上映時間が3時間越え。

でも、意外に観れてしまう不可思議さがあるんですよね。

何なんでしょうね。この感じは。

ラストの展開からエンドロールが流れて間の虚無感が全てを象徴しているような感覚がありましたね。マジでチーンってなってましたから。

そんな映画体験も、ある意味映画じゃないと出来ないじゃないですか。

だから良いんですよ。

監督のインタビューで述べられていたんですが、「ユダヤ人の恐れ」を表現したような部分があるらしいんですよね。

恐れがを視覚化し、不条理さを認知するとどうなるのか。

ただ、日本人にはその感覚はわからないわけなんですが、では楽しめないのかというとそういうわけでも無いかと。

個人的には”人生”というものを極端な角度から観るとこういうことになるんだろうなと思うわけです。

人はそれぞれが悩みだったり、恐れ、不条理といったマイナスの事柄を抱えながら、不確実な未来に向かってサバイブしていく。

それって本当にどういうことが起きるかわからないし、想像を越えるような出来事や結末を迎えることがあると思うんです。

それを理解して受け入れるのか、抗うのか、流されるのか。常に選択の繰り返しなのかなと。まあ、それがい意図してもしなくても起きるわけですが。要は心構えですよ。自分がどう思うかということの。

なので、この話はボーの視点から見たボーの世界。

世界をどう解釈し、どう見ているのかという視点で観ると、何が起きてもおかしくはないわけです。

その意味で、ボー自身、恐れに恐れつつも、恐れなしではいられないといった部分も多分にありそうで、じゃなければあんな世界観で生きていけないですからね。

物語自体は4部構成になっているようですが、その構成すら初見では全く理解できず、全てが夢のような狂った物語。

特にあのボーのアパート周辺の町の作り込みと雰囲気凄かったですよね。

観ているこっちも恐れてしまうほどのカオスさ。人が街を形成しているのか、街が人を形成するのか。

あんな街に住んでいることすら恐怖でしかないわけで。ただ、観ていて純粋に楽しめる街ではありましたけど。

あと、監督も本作はホラーというよりコメディだと言っていたんですが、確かに笑えるシーンも多いんですよ。

展開がぶっ飛んだ分、笑っていいのか微妙ながら、それでも絶対的に面白い。笑えない笑いとでも言いましょうか。シュールさがある感じですね。

これも世界の見え方の問題だと思っていて、静かにしてなきゃいけない場所で笑ってしまいそうになったり、畏まった席で笑いそうになったり、怖いんだけど笑えて来たり。

ダウンタウンがやっていた企画「笑ってはいけない」もそうじゃないですか。

そういった相反するからこそ変な笑いが起きるみたいな感じですよ。

極限まで研ぎ澄ますと全ては笑いに通じる的な。

ブラック過ぎる部分はあるかと思いますが、恐怖と笑いも紙一重なんじゃないかなと。

あくまでも当事者じゃなく観ている側としてはの話ですが。

そんな観ていることちら側を認識させてくれるラストの演出は、どこか壮大な「トゥルーマンショー」的でもあり、全て娯楽に転嫁されてしまうような世の中への風刺もあるのかなと思わされてたりもしました。

このラストの感じは割と好きで、水に浮かぶボートが映されたまま流れるエンドクレジットは良かったですね。

とにかく映画館で体験する以外の選択肢は無いですよ。これは。

では。