『エイリアン』
逃げ場のない宇宙船のなかで、襲い来る未知の生命体=エイリアンの恐怖を描いた、SFホラーの金字塔。「デュエリスト 決闘者」で映画監督デビューしたリドリー・スコットの長編監督第2作で、世界的ヒットを記録。エイリアンと戦う航海士リプリーを演じたシガニー・ウィーバーの出世作にもなった。
地球を遠く離れた広大な宇宙で就業していた宇宙船ノストロモ号は、ほかの宇宙船からの救難信号を受けて、未知の惑星に降り立つ。そこには異星人の宇宙船があり、船内には卵のような謎の物体があった。その卵の中から奇怪な生き物が飛び出してきて乗組員に寄生し、やがてそれは宿主の腹を食い破り、ノストロモ号内に潜伏。その後、成長した宇宙生物は乗組員をひとりまたひとりと抹殺していく。生き残った女性航海士リプリーは、逃げ場のない閉鎖された宇宙船内で、たったひとりで絶望的な戦いを繰り広げることになる。
エイリアンの特徴的なデザインは、スイス出身の画家・造形作家のH・R・ギーガーによるもの。リプリーを演じたシガニー・ウィーバーは本作以降「エイリアン4」までシリーズ4作に出演。
久々に見返したんですが相変わらず怖い、グロい、美しい。
SF作品の何が好きって、非日常感と未来への憧憬なんですよね。それにプラスして、こういう未知の危険が迫る系だと、今を生きてという生も実感できる。そういうかけがえの無さなども感じながら観てしまうわけです。
なぜ見返してこなかったのかと思ってしまうほど、こんなに良く出来た作品でワクワクさせられるとは。
まずオープニングタイトルの出方と横にパンしていくカメラワークが相まって非常に神々しく美しい。
タイトルのアニメーション、カラーの移り変わりやぼんやりと徐々に完成されていく様もお見事。あのフォントも相変わらず格好良いんですよね。
そこから始まる1979年に制作されたとは思えないセットの美しさ。
緑味を帯びた宇宙船を中心に造形物がとにかく神秘的に見えるんですよね。
エイリアンなどのデザインも含め、とにかくデザインされたカッコ良さのオンパレード。ギーガーが関わっていることを感じさせる部分も有りつつ、この世界観を維持できるバランス感覚。
おどろおどろしい雰囲気とゴシック調のテイストを身にまとった世界観。いやぁ今見ても古びず、これだけでも見る価値ありです。
音の演出も素晴らしいですよね。
ジェリー・ゴールドスミスが担当していることもあり、エモーショナルで変拍子なリズムが未知なる空間と相性良すぎ。
機械音など微細なところのサウンドバランスも秀逸で、臨場感あるサウンドは大きく、緊張感をもたせる場面では繊細にというコントロールも良い味出してました。
あと今回思ったのか地味にスタイリングが格好良いんですよね。
船内のデザインやメカニック、エイリアン等の造形が格好良いのはわかっていたんですが、スタイリングもよくよく見ると真似したいものが多い。
船長ダラスの着こなしが特に好きで、野暮ったい髪型に髭、カーキのTシャツに白のつなぎを着て更に色の濃いダークグリーンのフライトジャケットのようなものを羽織っている。
この配色と各アイテムのバランス感が好きですね。
他の演者も以外にそれぞれのこだわりや気質なんかが雰囲気に出ていて、ファッション的な観点でも中々参考になりますよ。
とはいえ映画として単純に素晴らしい。
ストーリー展開も全く気を抜けない作りですし、造形に見入ってしまい、良くも悪くも常に集中状態。
細部にまで思考を凝らし、様々な背景を想像しているとあっという間なんですよ。
そこにエイリアンの存在がちらつきますからね。
これも時代性なんでしょうけど、今に比べて技術的に劣っていたからこその方法で不安を掻き立て、存在をハッキリと見せず、想像や気配において恐怖へと誘う。
”不安による恐怖”という人間の本質的な側面にこだわり、技術じゃなくて本当に怖いところを突けばこれくらいは出来るという凄みを感じさせられますよね。
マジで色々と驚き、恐怖しますから。
チープだとかそんなのお構いなしに、本気で今見ても怖がれる。
造形に対するジトッとした粘着性であったり、CGでは出せないような物理的グロテスクさも満載で、気持ち悪いし、怖いし。
とにかく美しさと怖さが混在したエイリアンシリーズの原点という意味でも改めて素晴らしさを体感させてもらいました。
ここからエイリアン祭りが始まったわけです。
それでは。