『アレック・ソス 部屋についての部屋』
アレック・ソスと言えば確か最初に目にしたのはポパイで連載されていたコラムなどだったような。
それは確かこの写真だった。
風景に馴染んでいるようで何故か不思議な印象を受けたのを覚えている。
カラーリングの配色と手触りを感じる解像度。とある人物の日常風景が背景に垣間見え、なんとも絶妙なバランスで品よくまとまっているなと。
ちなみにアレック・ソスの簡単な説明を。
アレック・ソス(Alec Soth)は、アメリカの現代写真家で、特にドキュメンタリースタイルの作品で知られています。彼の作品はアメリカ中西部を中心に、アメリカの片隅で暮らす人々や場所の「孤独」と「詩情」を独特の視点で捉えたものが多いです。彼はミネソタ州を拠点に活動し、代表作としては『Sleeping by the Mississippi』や『Niagara』などがあります。これらのシリーズは、個人的で詩的な要素を持ちながらも、現代アメリカの社会的な側面を反映しています。
アレック・ソスはマグナム・フォトのメンバーでもあり、写真の「物語性」を重視し、親しみやすくも深いテーマで見る者に強い印象を残す作品を作り続けています。
そんな彼の写真展が恵比寿で行われているとのことで行ってきました。
面白いコンセプトになっており、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているとのこと。”部屋”をテーマにこれまでのソスの作品を編み直すという独自の試みが成されている。
ソス自身も、「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と述べており、独特の感性から構成される切り取り方が興味深い展示になってましたね。
技巧的な写真もあれば、精緻な写真もあり、とにかく初見でも目を惹く写真が多い気が。
故に自分自身も写真に興味を持った初期に惹かれていたというのは納得させられるところがあり、さらに部屋という場所にフォーカスしたことでより作家性が分かり易い展示構成になっておりました。
部屋という空間を鑑みれば、限られた空間だからこその構図が要求されるわけで、それをどういったトーンでどのように収めるか。
ある意味で写真が内包する枠内性みたいなものが部屋という空間に収められている分、いっそう引き立てられ、限定条件が写真そのものの有限性を高めている。
見るものにとっても、ただ撮ればいいわけじゃなく、どう撮るかということを細やかに気付かせてもくれる。
そうした視点から見えてくる、写真の細部。よりクリアで興味深く、感覚的な気付きに対し、俯瞰した視点を与えてくれる。
どう撮ったかと考えるのも面白い。
ちなみに先に書いた技巧的なというのはこうした写真群。
仕上がりに内包するファンタジー性を帯びたテイスト。そこに現実感を程よくフィットさせ、フォーカスがどこにあり、奥行きと重層感をどこまで含めるのか。
多面的な構成をにあくまでも一枚画に収めるというバランスが見事なんですよね。
対照的に精緻的な写真としてはこちらなど。
男性の顔をどこまで切り取るのか、フォーカスはどの程度当てるか、カラーバランスと濃度は、など。
配色の巧みさと構図のバランスが美しい写真が多いんですよね。
写真というキャンバスを使い、一枚画をどう構成していくのか。こうした限定空間で演出し、策をこらすというのもまた一興だなと思わされたり。
感性への刺激、自身の原点への回帰、好きなものは変わっても、変わらない感覚もあるものだなと改めて。
では。