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パークライフ

日常の機微に気付かせてくれる。そして考えさせてくれる。

パークライフ

パーク・ライフ (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)

 

最近古本屋の100円コーナーに立ち寄り、何となく小説をジャケ買いすることにハマっております。

そしてその感覚は大体ハズレず、本作もそんな中からの一冊。

この小説は短編2作品からなっていて、表題が一つ目の作品。読み出した時がたまたま、昼下がりの東横線内。イヤホンから流れていたのはKurtvileかbigthiefか。

ふと視線を上げた時、多摩川が目に入り、その瞬間にこの小説の空気感と風景と音が同化した気がした。

この作品の面白いところが『何も起こらない』ということ。

そう聞くと面白くなさそうに聞こえるかもしれないけど、それが逆に面白く、興味をそそられる要素が随所に散りばめられている。そしてそこから受けるテーマ性。個人的には『矛盾と対』がキーワードだと思った。

冒頭にある地下鉄での出来事、後ろにいると思っていた先輩はおらず、見知らぬ女性に話しかけてしまい・・・と始まるところなんて、色々と何で?と思わされるものの、その後も読み進める中で何度もそういった感覚に陥っていく。

人間の持つ繋がりって実際、奇妙なものだよな。と思わされる中で、文字としてそれらを見させられると一層その認識は強くなってくる。何も起こらないのに、自分の頭の中では次々と?が生じる。

その感覚がやたらと心地よく、ふとした時に思い出してしまうところに本作の魅力があるように思う。

パークライフというだけに公園が舞台なんだけど、そのチョイスも作品性に凄く合っている。公園という誰でも入れて、いつでもいれる空間。

それが都内の中心にあるとなるとこれまた異質なわけで、その感覚は人間同士の関係性の奇妙さにも似ている。当然、そこにいる人々も全く関係無い。それでも本作のように毎回訪れる人からすればちょっとした親近感を覚えることもあると思うし、それは自然なことだとも思う。

その近いけど遠い、親しいけど親しくない、嫌いだけど好き、見えているけど見えていない、都会なのに自然。そういった一見矛盾してそうなものを凝縮して拡散しているのが本作の面白い所で、個人個人フックアップされる箇所は全然違う気がする。

もう一つの側面として、対になる二面性の面白さがある。

体の内側と外側、思っていることと言っていること、外見と内面、建物等の内部と外部、そういった構造的なモチーフをいくつも登場させることで、色々なことが図式的に単純化されると同時に不思議な感覚に迫られる気がした。とにかくふわふわしているのにギュっとしてる。日常系のゆるい話が好きな方は楽しめる作品なんじゃないでしょうか。

ちなみにもう1作目が『flower』という作品なんですが、これも似たようなテイストで楽しめます。個人的にこの作品を読んで花が気になりだし、興味を持ったことはまた別の機会にでも。

備忘録的に気になった箇所を。

p16近藤さんは
p27風景というものが実は
p30僕が何を眺めているように
p32私がどんどん集まってくる
p34ほんとうに知りたい
p40私がここで落ち着いて
p53そんな風に見えてました
p58 人間とはからだのこと
p69外側だけが個人
p78言葉を休める