映画的であり現実的
『圧倒的暴力の気持ち良さと潔さ~チェンソーマン編~』
最近の漫画の中では色々な意味において衝撃を受けた作品でした。
設定やタイトルからしてド直球というか直球過ぎるくらいの雰囲気が出ており、正直読むつもりはそんなに無かったんですが、何となく軽く読めそうなので読み始めたら、止まらないわ、面白いわで猛烈にハマっております。
ストーリーは至ってシンプルに『悪者=悪魔を狩っていく』というもの。
こう聞くと王道のバトル漫画なのかと思いきや、全くその様相を呈していない。というか規格外の雰囲気すら出ており、ジャンプ漫画では珍しいような構成や展開。
作画に関してもコマ割に関しても映画的というか、大友漫画に見たようなスペクタクル感を感じました。
個人的には連続して動きを見せるコマ割の感じなんかは映画のカット割りを彷彿とさせますし、アクションシーンのダイナミックなカットも映画に近しい躍動感を感じます。
作者自身も映画好きなようで、随所に散りばめられた映画的小ネタなんかを感じるところもツボにハマっております。
テーマ設定も刺さるところがあって、主人公のデンジは虚無的というか、今の時代感に精通するような世界認識をしていている気がするんですよね。先が見えないというか未来に対して過剰な期待をしていないというか。
それに加えて、いつ死んでもいいというような諦めにも似た感覚も持ち合わせていて、とにかくクール。それもいわゆるクールな感覚とも違って冷めているというか、さばさばしている感じ。
それでいて自分の欲求はシンプルに本能的。朝ごはん普通に食べたいとか、胸を揉みたいとか。そこのある種の諦め感とかが今の気分とマッチしている気がして最高。
極めつけがその消化方法。そこまで溜まっている鬱憤だとか、虚無感みたいなものを消化する方法が『とにかく暴れる』ということ。
このシンプルかつ意外に誰も表現しなかった方法でカタルシスを消化していくところに本作の潔さを感じずにはいられない読者が多い気がします。
展開もスピーディーで忖度しない作者な気がするので、どこまで続くのかわかりませんが、リアルタイムでこの作品を終えることを嬉しく思います。