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ビューティー・インサイド

斬新な切り口での深過ぎる問い。個ってなんなんだろう。そんなことを考えさせられる。

『ビューティーインサイド

ポスター画像


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眠りから覚めると外見が変わってしまう主人公の恋愛を描いた韓国製ファンタジックラブストーリー。

男性、女性、老人、子ども、外国人など、目が覚めるたびに外見が変わるため、人に会う仕事ができないウジンは、インターネットを生かして家具デザイナーとして働いていた。ある日、家具屋で働くイスに恋をしたウジンは、彼女をデートに誘い、同じ顔を保つために3日連続で寝ずにイスと会う。しかし、眠気に勝てずに眠ってしまい……。

目覚める度に外見が変わるウジンを、ユ・ヨンソク、イ・ジヌク、パク・シネ、コ・アソンら韓国の人気俳優、女優たちが演じ、上野樹里もウジン役のひとりとして韓国映画に初出演。イス役は「王になった男」「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」のハン・ヒョジュ

2013年のカンヌ国際広告祭でグランプリを受賞した、インテル東芝によるソーシャルフィルム「The Beauty Inside」を原案に、CMディレクター出身のペク監督が長編映画

良くあるテーマながら、独特な表現と演出で、気付いたら引き込まれていた、そんな感じの作品。

韓国系の作品ってそこまで観る方でも無いんですが、独特な世界観というか、アジアの中でもある種、唯一無二的なものが多いという印象があって、正直そこまで得意な方では無いんですよ。

美男美女が出てきたり、とんでもない展開に話が転がって行ったり。日本で言う少し前の昼ドラ的な雰囲気があると言いますか。

ともすると、この作品もそうした方向にいってもおかしくないところ、意外にそういう展開抜きで楽しめてしまった。

ただし、イス役のハン・ヒョジュ、彼女だけは例外でした。

なぜって、綺麗過ぎる。

ビューティー・インサイド」ハン・ヒョジュから日本に向けたメッセージ映像到着 - 映画ナタリー

他の作品に出ている時にどういう感じなのかは知りませんが、とにかくこの作品での彼女は、ファッション、キャラクター、ヘアスタイル、雰囲気、笑顔、醸し出す全てをひっくるめて完璧過ぎる。

個人的な趣味が入っていると言われればそれもそれですが、それを差っ引いても絶対に皆好きになるでしょといったレベルの人物造形。

そんな彼女との恋愛を持って、人は外見か中身かと問われても、そりゃ厳しいわけです。

逆に言うとそうした別視点で観ることも出来るので、実際にはそれが狙いなんでしょうか。

ちなみにこの作品は朝起きると毎朝顔が変わってしまう人間がいて、その人物に恋愛が出来るのか、愛とはどういう事なのか、そんなSF的視点から恋愛や日々の生活を問うたようなもの。

その毎朝顔が変わる人間、ウジンという主人公が、このイスという女性を好きになって・・・というお話なんですが。これが予想の斜め上をいく感じで表現されていく。

先に書いた相手役のイスが綺麗過ぎて、そんな相手がどういった葛藤や苦しみを持ち、わざわざウジンを選ぶ必要があるのかと思っちゃうわけですよ。

よく「人は中身だよ」と言いますが、本当にそう思えるのかという視点を、実際に別の人になるというビジュアル的見せ方で表現することで、よりリアリティを持って迫ってくる問いの感じ。

確かに中身は重要だと思うし、外見がいくら良くても相性が良くなければとも思います。

だからといって、全く異なる外見に毎日変わる人物がいたとして、どう感じるのか。作中でイスが精神的に不安定になってしまうんですが、それも納得。実際にそんな状況になったら、どんなに頭ではわかっていても身体が付いていかなくなると言いますか。

その人をその人たらしめるのは一体何なのか。普段から興味はあるし、そうした話は割と好きな方なんですが、本作ではその描き方があまりに衝撃的で。

毎日顔が変わるって。

ちょっとした染みた、ライトな設定に見えて、グサグサ刺さってくるというのが本作の不思議な魅力かなと。

とある待ち合わせシーン。街中でちょっと冗談のようにウジンがイスに電話して「近くにいるから探してみて」というところなんて、想像するとイスの気持ちがわかるというか。

好きな人のはずなのに、近くにいても気付かないかもしれない。多分この人だろうと思っても違うかもしれない。

そう思った時に何を信じ、何を愛していると言えるのか。

そういった当たり前じゃない設定が引き起こすどうしようもなさにメチャクチャ胸が締め付けられる。

そんなシーンと展開がちょいちょい出てくるん。そのたびに何とも言えない複雑な感情というか、モヤモヤするような気持ちにさせられる。

それらがある種の形を持ってスッと入ってくるのが雪中でのロングショット。

ウジンがイスに別れを切り出すんですが、このロングショットが堪らなく良いんですよ。

今までの流れや色々と頭に溜まってきた鬱屈を消化してくれるような。それでいて、納得は出来ないけど、優しさや思いが詰まったような。

このシーンを観た時に、「あぁ、これが愛なのかもな」そんな風に思えてしまい。不条理とやるせなさと共に、涙がこぼれました。

そこからラストへ向けシネスコサイズの画角が生きてくるというか、より際立つ思い出としての雰囲気。

結局人が人を愛するのって、外見とか中身とかですらなく、『自分が必要としていて、傍にいたくて、相手もそう思っていることを無意識的に感じられるか』そんな潜在的なフィーリングこそが根本に必要なのかもなと。

ポスタービジュアルがウォーホールポップアート的で、何となく惹かれて観た作品だったんですが、今思うとこのビジュアルも良くできているなと。

アイコニックで消費社会を揶揄したアート、それに対してある種の没個性が潜む、人と言う存在。

何が良いかも悪いかも決めるのは自分、それって決して言語化できるものが全てでも無いんだろうなと感じさせられる名作。

それにしてもハン・ヒョジュ、演技力含め、大好きになってしまいました。

では。