常々思うけど、坂元裕二脚本作品は本当に人生や日々の気づきに満ちているなと。
この作品が放送されたのが2011年だったから私自身は社会人になりたての頃だろうか。
当時から既に衝撃的だったのは覚えているし、物語がどう転がっていくのか、全く予想できずに観ていたことは今でも覚えている。
そんな本作を改めて見直したんですが、間違いなく今の方が食らう。
生きるということ、人を愛するということ、家族、人生。経験をしてきたからこそ思う事、感じることが増えていくわけで、それでも生きていかなきゃいけないという思いが募っているからこそ感じることが増えたのかなと思う。
この作品ってまずテーマが重いじゃないですか。
”それでも、生きてゆく”って。
こんな境遇の人ってそうそういるものじゃないだろうし、いたとしても、ここまでの状況に陥る事はそうそう無い。というかほぼ無いですよ。
それなのに観る人に刺さるというのが面白いところですよね。その背景にあるのが絶対的な脚本の見事さ、それから演者の魅力じゃないでしょうか。
脚本的にどこが魅力なのかというと、まず心の葛藤の描き方と持っていき方が素晴らしい。
本当にこういう事が起きた人達って、こう思うものなんだろうなという妙な説得力があるし、言葉に出来ないような感覚的雰囲気もビシビシ伝わってくる。
それと同時に、こんなことにならなかったとしたら、という人物像もうっすらと背後に見えているし、人となりやその描き方、設定が良い。
そこに恋愛と言う要素をこういう形で持ってくるのかというところも良くて、ともすると失敗してしまいそうな設定を、この形ならあり得るし、だって仕方ないよなと思わせる説得力すら出てくる感じ。
人って境遇や状況が感情をコントロールすることもあるだろうけど、逆にコントロールが効かないから人なんだと言える部分もあって、そういった功罪を描いているような表現や演出、見事なバランス感覚ですよね。
それと坂元裕二脚本にある独特なワードセンス。
彼が脚本を書く作品にはどの作品でもそのセンスが光るわけですが、本作ではそのストーリー的な重さゆえの真実が垣間見える名言が多く、とにかく打たれる。
だってタイトルからして『それでも、生きてゆく』ですから。”それでも、”ですよ。立ち止まっても生きていかなくてはいけない。何があろうと生きなきゃいけない。ある種義務的にそう言われても、こうした状況下でもそう思うことが出来るのか、思わなきゃいけないのか。
そんな葛藤の中、人を納得させ、惹きつける魅力が本作にはある気がするんですよ。
そして二つ目が演者の魅力。
出てくる俳優全てが良いんですよ。
瑛太、満島ひかり、風間俊介、田中圭、大竹しのぶ、安藤サクラ、風吹ジュン、時任三郎、小野武彦、柄本明。
他の演者も素晴らしいですが、主要な登場人物たちの設定上のハマり加減が見事過ぎる。
表情、葛藤する気持ち、行動の起こし方、間。
絶妙過ぎて言い表せない機微をメチャクチャ丁寧に演じているし、リアリティのある演技力でこちらをグイグイ引きずり込んでいく。
なんかそれぞれに気持ちが入り過ぎちゃって、苦しくなるというか、兎にも角にも追い詰められていくんですよ。観ているこちらまで。
なので何回も観たいと思う作品かと聞かれると微妙な所ですが、折を見て観返したくなる名作じゃないでしょうか。
では。