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水のような感動が広がる物語: 『海、のち晴れ』が描く心の波

個人的に水が瑞々しい映画や本っていうのは前から好きで、この作品も表紙に惹かれて手に取った一冊。

「水のような感動が広がる物語: 『海、のち晴れ』が描く心の波」

家にも学校にも居場所がない“とよ"と、海辺で会った同級生の“はじめ"。
二人は同じ痛みを共有していく―――――。

新鋭・高見奈緒が描く孤独な少年少女の痛みと再生の物語。
圧倒されるような筆致で、繊細な少女たちのエモーショナルな心情を描く。

学生の頃に抱く閉塞感や孤独感って、感じる人は感じるものだと思うんですが、自分自身もそれを思うことはあった気がする。

それって社会に出てしまえば、生活圏が狭かっただけだと気付くわけですが、逆に大人になればさらに広い枠でのそれらを感じることもある。

違いが何かといわれると、学生時代のそれはまだ熟しきってないアイデンティティとの葛藤であったり瑞々しさだと思っていて、だからこそ水とこうしたテーマは相性が良い。

この作品を読んでいて感じるのが「気持ちのうねり」のようなもの。

波が押しては返すように、感情にも浮き沈みとは違う、揺らぎがある。

それを繊細で流れるようなタッチが、物語的にも、描写的にも表現されていて、とにかく印象に残るしずる感がある。

単に世界観に埋没するような物語になっていないのも良くて、終盤パートでの晴れ間を感じさせていく、まさにタイトル通りの展開に、まるで霧が晴れていくような爽快感と希望が見出されていくところも好きな部分ですね。

誰しもが何かに悩み、苦しむこともあるだろうけど、「何か」や「誰か」という拠り所があればそれは乗り越えられるのかもしれない。

そう思わせてくれる、非常に水の存在を感じさせる見事な作品でした

では。