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ミッドナイトスワン

心が溢れ過ぎた。

『ミッドナイトスワン』

ポスター画像


9月25日公開『ミッドナイトスワン』100秒予告

草なぎ剛演じるトランスジェンダーの主人公と親の愛情を知らない少女の擬似親子的な愛の姿を描いた、「下衆の愛」の内田英治監督オリジナル脚本によるドラマ。

故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙。

ある日、凪沙は養育費目当てで、少女・一果を預かることになる。常に社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。そんな2人にかつてなかった感情が芽生え始める。

草なぎが主人公・凪沙役を、オーディションで抜擢された新人の服部樹咲が一果役を演じるほか、水川あさみ真飛聖田口トモロヲらが脇を固める。

今年観た映画の中で、一番食らったかもしれません。

良かったとか、面白かったとか、感動したとか、そういう作品は数あるものの、食らったと思わされる作品はそう無い気がします。

温かみのあるライティングとショットに始まり、ジョーカーにあったようなショータイム前の高揚感漂う雰囲気に、冒頭から期待感が高まります。

正直前半部分は冒頭シーンを除き、重い。それでも、辛いシーンが続くことを微塵も感じさせないオープニングは視聴前と視聴後で見え方が一変するところも妙な感覚があって面白いところでした。

それから続くストーリーは個々人が抱える悩みみたいなものが漏れ出したような場面の連続。観ている側にも違いはあれど何かしら心当たりがあるような人生における苦難。それらを容赦なく綺麗事抜きで見せ付けてきます。

そのスタンスも凄い好きで、人生に綺麗事なんて何の為にもならないよと思う自分の気持ちを掬い取ってくれているような気がして。

そういった描写に拍車をかけるのが役者陣の演技。とりわけ主演二人の演技は素晴らしく、とにかく魅了されました。

草彅に関しては、草彅では無く凪沙という確固たる別人格そのもの。それくらい役になり切っていたし、そうやって存在していた。目の演技が特に素晴らしくて、直接心に訴えかけてくるような場面が何度あったことか。

そして、一果を演じていた服部樹咲は映画初出演の新人とは思えないほどの存在感。前半パートから後半パートにかけての変化や、表情、仕草、話し方、全てにおいて恐ろしい演技力で、今後が楽しみで仕方ありません。彼女を観る為に観ても損しないほど、引き込まれるものを持っている女優だと思います。

この映画を好きなシーンで語り出したらきりが無いくらい、オールシーン素晴らしかった。観ていて綺麗で恍惚的なところは絵画のそれに近いほど美しく儚い。そこに潜むダークな諸々も引っくるめて絵的に美しい。

赤が印象的に使われていたところもポイントで、その使い方も情熱や闘士といった攻撃的なものでなく、格調や優雅さにも似たアクセントになっていて、ラストシーンまで最高にあがりました。

劇伴も最高で、シーンにぴったりとハマって、作品自体を2倍にも3倍にも引き上げてくれるような出来。こんなに美しく映像を引き立てる音をどうやったら作れるんだろうと思ってしまうくらいにずっと聴いてられます。聴くだけでシーンやその時の心情が蘇り、ウルっときてしまうのも仕方がないことなのかもしれないと思ってしまうほど、浸れる楽曲群でした。

本作を一言で言ってしまうと、とにかく美しいの一言。こんなにエグい事や重い事象を語っているし、結果的にも決して完璧に救われるわけでもない、それなのになんなんでしょう、とにかく美しいんです。映像的、音楽的なものは先に述べた通りですし、シーンをとってもそう。

バックショットはとにかく雄弁に語りますし、中盤以降、凪沙の一果に対する心遣いも高貴で気品に溢れている。

最初のハニーポークジンジャーのシーンなんて、その典型ですし、その後の家で寝ていて一果が突然訪ねてくるシーンも痛々しいほど品性を維持しようとしている。後半の凪沙の所作はどこをとっても女性以上に女性らしいというのは本当に見事だと思います。

一果のバレエシーンもただ魅了され、バレエというか芸術の凄さを感じました。

個人的に、知らない何かを素晴らしいと思える映画って凄く好きで、そういう意味で、本作のバレエにはその特徴があった。

バレエなんて生まれてこの方一度も興味も関心も持ったことは無いのだけれど、この作品終盤、海のシーンで凪沙が言っていた「美しい」という台詞を心の中で反駁している自分に気付いた。ただ美しい。そう思える瞬間に出会わせてくれただけでも幸せな時間だったと思えた。

1人で観てボーッと考えたい。久しぶりにそんな作品だった気がした。

二度観たんですが、書いているうちにもう一度観たくなってきたので近々行くことになりそうです。

余談ですが、サントラも買いたくて見ていたのですが、どこも取り寄せとなっており、それも肯ける作品だと思うところに本作の魅力が集約されている気がします。あと細部も気になるので小説も読んでみたいところです。

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