もしかしたら現実は現実じゃないのかもしれない。
『トータル・リコール(1990)』
ポールヴァーホーベン監督作品は観たいと思いながら中々観れていなかった作品でした。
今回コロナ禍で徐々におかしくなりつつある世界というものをひしひしと感じる中で、こういったSF作品が気になり観てみることに。
1990年の作品とは思えない脚本に驚きましたが、それはどの名作SF作品も同じこと。それに現実味を帯びさせるような暴力描写やリアリティバランスはポールヴァーホーベン監督の特徴なんでしょう。このバランス感が結構ツボで、とにかくためらいが無い。
それこそがリアルであって、描いているのは近未来というのも興味をそそる。このアンバランスなところにこそ魅力が詰まっている気がしました。
原作はフィリップKディック作品のようですが、その解釈の仕方や画で見せる表現なんかも素晴らしく思います。今のSF作品って、より技術的、デザイン的に進化しているように思うんですけど、単純にワクワク感に欠けている気がしていて何となく物足りない。
本作で登場する角張った構造物や車、街の看板や構造、家の雰囲気やマシンのデザイン、チープなものとハイテクなものが同居しており、それらはファッションなんかにも顕著に出ている気がしています。
主人公であるシュワルツェネッガーは基本的に普通の恰好だし、他の街の人たちも大体がそう。だけど一部では近未来的な恰好も出てきて、その感じの雑多なバランス感もどことなく好きな感じ。
観ている最中に伏線を刺激するようなプロットも良く出来ていて、どこからが現実で、どこからが仮想空間なのか、曖昧にとれるような仕掛けが各所に散りばめられていて、視聴後、頭の中でリピートしてしまいます。
自分というものが何で、世界というものが何なのか、一見わかっているようでいて何もわかっていないし考えることすら無いという所にメスを入れるようなところはやはりワクワクと共に面白さを感じずにはいられません。
そんな感じで、ヴァーホーベン監督作品をちょっと掘っていければと思っております。