画的快楽とディティールの心地良さ。
『燃えよ剣』
新選組副長・土方歳三の生涯を描き、過去に映画化、ドラマ化もされてきた司馬遼太郎の歴史小説を、「関ヶ原」の原田眞人監督&岡田准一主演の再タッグで新たに映画化。
江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。
武州多摩の農家に生まれた土方歳三は「武士になりたい」という思いで、近藤勇、沖田総司ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。
土方歳三役の岡田のほか、土方と生涯愛を貫くお雪役を柴咲コウ、近藤勇役を鈴木亮平、沖田総司役を山田涼介、芹沢鴨役を伊藤英明がそれぞれ演じる。
剣が出てくると萌えると言いますか、そこまで刀剣乱舞しているわけじゃないんですが、武士や剣豪、そういったものには何故か憧れてしまいます。
そんな新選組を描いた作品が本作なんですが、中々良かったです。
どうしてもこういった時代物って昔の作品の方が良いと思ってしまうんですが、今は今の良さもあるなと。
本作を観ていて特に良かったのは寺社仏閣の描き方と明暗の使い分け。寺社仏閣は撮られている構図の広さだったりダイナミックさが非常に効果的に見えましたし、なんというか凄みや風格が建物から漂ってきていました。
その優美な佇まいは他の映画における寺社仏閣より際立っていた気がします。これも明暗の使い分けだったり、その強弱、トーンなんかが影響してるのかなと思ったりしながら、ただその美しさと迫力に圧倒されました。
そして明暗の使い分け。先ほどの寺社仏閣にも表れていた気がしますが、それ以外のシーンでも使い分けが印象的。技術の進歩もあると思うんですが、特に暗部の立ち上がり方が非常に綺麗で深みがある。その辺の丁寧な画作りであったり、そこからの明転なんかは差が激しい分インパクトがある作りだなと思わされました。
殺陣に関してはとにかく土方演じる岡田君のキレが半端ない。ドラマのSPの時から思っていたけど、衰えることなく、むしろ年々キレが増している気すらしてしまうほど。
近藤演じる鈴木亮平は言わずもがなですが、沖田演じる山田涼介の存在が凄く良かった。あの可愛らしいけど芯があってといった沖田のバランスを見事に表現していたし、フワフワしていて凄みもあるような場面も見られ、良いスパイス的に機能していた気がします。
刀の見せ方やそれにまつわる語り口もサラッとしているようでいて、しっかりと興味を惹くような雰囲気もありましたし、名刀にはやはり自然と惹かれてしまう。
物語の展開も後半まで土方を語り手として置くことで、切り捨てた部分も意外に違和感なく進んでいた気がしました。
まぁ全体として観ると、正直物足りない感じもありますし、時折り気になる現代劇的なやり取りもあったように思いますが、そう言った点に目を瞑ればまずまず楽しめる作品になっているんじゃないでしょうか。
逆に原作が観たくなってしまったのはある種これだけの物語だと仕方がないのかもしれません。