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このタイミングにこそ考えたい存在理由。

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License to Live 1998 - Movie Trailer

昏睡状態から10年ぶりに目覚めた青年が、家族再生に奮闘する様を描いたニンゲン・ドラマ。監督・脚本は「蜘蛛の瞳」の黒沢清。撮影を「フ・レ・ン・チ・ド・レ・ッ・シ・ン・グ」の林淳一郎が担当している。主演は「冷血の罠」の西島秀俊。第11回東京国際映画祭コンペティション正式参加、第49回ベルリン国際映画祭正式出品作品。

久しく映画からも離れていたんですが、何となく観ようと思っていたリストから目に留まったので。

黒澤清監督作品って独特な雰囲気があって、空気感というか画作りというか、なんか不気味で異様な感じが漂っている気がするんですよね。

その部分に惹かれるというか、誘い込まれるというか、とにかく妙に心地良く感じることがあって、今は正にその時でした。

本作も相変わらずの不気味で写実的なショットは健在ですし、特に動では無く、静のショットが印象的でした。

ストーリー自体がありそうでありえない突飛なものなんですが、その部分、10年間の昏睡状態から普通に生活するということへのフォーカスが妙に薄く、何の話をしているのか、どこに向かっている話なのかが終始わからない作り。

それを演じる主人公の西島秀俊演じる豊の虚無感たるや。

今でこそ立派な役やしっかりした印象がある俳優さんですが、この時のか細い風貌、中性的な雰囲気は本作でのこの役にピッタリだったんじゃないでしょうか。

この映画の肝は何だったのかと言われれば、『人生における存在の意味』とかになるんでしょう。

10年間という失われた時の中で、失ったもの、失わなかったもの、失うべきじゃなかったもの、失ったほうが良かったもの。そういった全てを考えさせられました。

作中に出てくるほとんどのキャラはその10年間の中で少しずつ変化しながらそれらを受け入れて時を過ごしている。

ただ一人だけ、表面上は変わっても芯の部分は何も変わらずに存在している男がいる。それが役所広司演じる藤森。このキャラが非常に曲者で、偽善感や損得勘定が全くない。

他の人間は皆、時の経過とともに何かしらの憎悪や憧れ、疾しさ、妬み、そういったものに少なからず侵されているにも拘らず、藤森にはそれが無い。

そして当然のように10年間で蓄積されるはずだったそういった感情が抜け落ちている為、豊かにもその感覚が無い。

それが全てだなと思っていて、人間が人間たる為には周りとの共存、協調から生まれる様々な感情を吸収し、消化して、良くも悪くも人として生きていける。

そう思った時に豊が持つ純粋さというのは残酷で行き辛い、というか生きられない存在の象徴に見えた気がした。

逆に藤森という男はそういった過程を経ているにも拘らず、失う、失わないという概念の外にいる気がして、それはある意味で産業廃棄物の様な存在。当初は必要とされ、不要になれば捨てられる。そんな現代へのアンチテーゼ的なキャラクターに見えて清々しくすら思えた。

結局豊が思ったこと、『10年という時に得ていたものが無いんだから失ったものも無い』という所が全てであって、存在意義を考える。それ自体が人生という存在を証明しているんじゃないかと思った。

このコロナが流行っている中での個人としての自主性を考えるいいきっかけになる映画だと感じた。

いつ終息するのかもわからないこの状況に、言われたままに動いているようでは自滅しかない気がするわけで。

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