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LETO レト

音楽の表現力と力に圧倒された。

『LETO レト』

ポスター画像

ロシアに実在した伝説のバンド「キノ」のボーカルと、その才能を見いだした妻をモデルに、自由と音楽を追い求めた若者たちの姿を描き、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された青春映画。

1980年代前半、西側諸国の文化が禁じられたソ連時代のレニングラードアンダーグラウンドではレッド・ツェッペリンや T・レックスといった西側のロックスターたちの影響を受けたロックの息吹が芽生えようとしていた。

そのシーンで人気を博していたバンド「ズーパーク」のリーダー・マイクのもとにロックスターを夢見るヴィクトルが訪ねてくる。ヴィクトルの才能を見いだしたマイクはともに音楽活動をスタートさせるが、マイクの妻ナターシャとヴィクトルの間に淡い恋心が芽生え始めていた。

無実の容疑で拘束されロシア政府の監視下にあるキリル・セレブレニコフ監督が、1年半の自宅軟禁の中で完成させた。カンヌ・サウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞。

コロナ禍において、体験としての音楽の欠如。これを体感させてくれたのが冒頭の長回しでした。

生々しいサウンドと空気感、長回し故に感じられたのであろうライブが纏う独特の緊張感は久々にライブに行った時の高揚感を盛り上げてくれました。

モノクロで進行する物語の中で時折ポップに登場するアニメーション。この出し方と曲の出し方が面白く。どこかミュージカルや舞台を観ているような錯覚を受けます。

途中で出てくるカラーの場面も、モノクロで進行している中でのイメージを現実に鮮やかに引き戻し、観てきたはずの物語に急に懐かしさの様なものを喚起させます。

このモノクロというのも本作には合っていて、生々しい空気感、場面内に存在する物語性に没頭させるという意味では最高の音楽没頭映画かと思います。

その音楽の使い方も気が利いていて、使い所、歌詞といったものもストーリー上で非常に重要な意味を持っており、各キャラの心情に反映しているところも面白いと思いました。

音楽が持つ意味合いみたいなものも非常に良く描かれている気がして、好きなバンド、好きな曲、そういったものからファッションや音楽性、はては人生観や考え方までをひっくるめて影響し、それらがビジュアルとして表現されていく。この辺の演出は観ていて誰と共感できるのかにも関わってきており、キャラとシンクロした気持ちで楽しめました。

個人的に好きなな楽曲シーンは2つ。

トーキングヘッズのサイコキラーが流れたシーンとズーパークのロックンロールスターが流れたシーン。

トーキングヘッズに関しては言わずと知れた楽曲ですが、かかる場面が秀逸。統制されたソ連において、その価値観を否定し、表現の自由を訴える。その為には狂人になったって仕方がない、狂人でしか成り得ない。そんな音楽の自由性観たなものが前面に出た演出だったし、そういった場面でかかったこの曲にやられました。

ある場面で「変わった人間こそが世界を変えられる」的な言葉が出てくるんですが、その辺含めて、このシーンを見ると一層見方が変わって見えました。

そしてズーパークのロックンロールスター。

正直陰鬱な楽曲が増え、少々眠くなっていたタイミングでこの曲がライブ演奏されました。冒頭からアコースティック調の演奏が始まり、またこういった楽曲かと思ったその時、「お前はこんな曲がやりたかったのか」といった掛け声とともにエレキギターが鳴り響き、突如としてオアシスよろしくな楽曲が流れて、一気に眠気も吹っ飛び現実へ。

ロックとしての、音楽としての、自分自身つしての、音楽との距離感みたいなものを再認識させてくれました。

自分が音楽に求めているのは感情のカタルシス

そんな初期衝動的な場面でこの映画との距離感がグッと縮まったのは言うまでもありません。

音楽に求めるものは人それぞれではあるものの、ある種それは一時のもので、音楽性も求めるものも変わっていく、それを体現していたのがマイクとヴィクトルの音楽性だったように思います。

ちょいちょい出てくるTレックスとルーリードの対比ですが、これはそのままマイクとヴィクトルの対比で、共に両アーティストを認めつつも表現する形は互いに違っている。

違いがあってもそれでいい。

ラストまで観た時にそんな気分にさせられる良い余韻が残る映画でした。

それにしてもヒロイン役のナターシャは綺麗だったな。女性の少し尖った感じだったり、あのヘアスタイル、ファッション。ああいう感じの雰囲気は凄く好みでした。