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ボクたちはみんな大人になれなかった

『ボクたちはみんな大人になれなかった』

ボクたちはみんな大人になれなかった (新潮文庫)

ボクたちはみんな大人になれなかった (新潮文庫)

 

それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。

気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。

彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在をSNSがつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー

あいみょん、相澤いくえによるエッセイ&漫画を収録。

誰もが一度は経験するであろう恋。それを軸としながらもその時代の空気感やサブカル、音楽、それらを巻き込む形でテンポ良く物語が進んでいく。

今となってはSNSスマホを通じて誰とでも繋がれるし、欲しい情報もすぐに手に入るようになった。

それらが絶妙に出来なかったアナログとデジタルの境目みたいなものが、手触りそのままに見事にパッケージングされている。

基本的には私小説的な形で描かれているんだけれど、とにかくワードセンスが素晴らしく、挙げればキリがないくらい心に刺さってきます。全体を通してもあらゆるワードから連想させる情景描写がとにかくリアルに浮かんでくるところも素晴らしい。

その時代、その空気感の中で、自分自身も生きてきたからこそ、そう感じるのかもしれないけれど、それにしても懐かしさすらリアルに感じてしまうところが本作の良いところ。

構成も絶妙で、群青劇的な人間模様を時系列、時にそれらを変えて、あくまでも重すぎないトーンで描かれていく。重すぎないというのがポイントで、構成という土台がしっかりしているからこそ、程度の良い、描写がされていて、人物像や関係性がわかるようでいて、本当にはわからない。そのバランスが何とも心地良良かった。

ああいう恋や体験をまたしたいなと思わせる反面、もう絶対にあそこまでの体験をすることは無いんだろうなと思わされる作品でした。