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『千年女優』が問いかける希望と現実の境界線

恐ろしい作り込みと熱意を感じる作品。

千年女優

ポスター画像


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パーフェクト・ブルー」の今敏監督が、数十年にわたり1人の男性を思い続けた女優の姿を、時間や空間を超えて描くオリジナル長編アニメーション。

小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作るため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。

30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語りはじめる。千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく。

第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」と同時に大賞を受賞。そのほか、第33回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得し、ドリームワークスにより世界配給もされた。

今敏監督作品というと緻密で一風変わったストーリーテリングな印象があるんですが、本作は最後でのどんでん返しが衝撃的。

凄く変わったことが起きるとか衝撃の展開がといったものでは無いので、特段何も感じない人もいるかもしれないなとは思いつつ、個人的には相当ゾッとしましたね。

アニメーションの部分でいうと、良くぞここまでバチバチにハメ込んだなというくらいにキマっている画の連続で、止め画としてのハマり具合というよりも動画としてのハマり具合が素晴らしい。

展開を緻密に構成していればこそ成せる技だと思いますし、それにしてもあそこまでビシッとハマるのもあまり見たことが無い。

遊園地などのアトラクションに乗ると、特段考えずに”連れて行かれる”感覚ってあるじゃないですか、あれに近いような感じ。

アニメというレールを下敷きにその世界観にずるずると引きずり込まれる。

どこまでがリアルで、どこが思い出、どこからが現在で、どこからが妄想、そんな様々な認識の虚を突いてくる。

段々と糸口が見えてきたと思ったら余計に冒頭からの流れを回顧したくなるところもあって、最後にはあの展開ですからね。

本作を観ていて思ったのが、”人は生きる上で何かしらの希望を必要とするのか”ということ。

何かを拠り所に、やり甲斐にして生きることって必要だと思うんですが、果たして本当にそうしたものを拠り所に生きていけるのか。

その是非を問われた時に、個人的にはそうしたものでは生きていけないなと思ってしまうわけです。

目的があることは当然重要ですし、目的地が無いとどこへも向かえないじゃないですか。

じゃあ皆目的意識を持って生きていたり、何かに縋って生きていたりするのかというとそうでもない。

じゃあ惰性、目を背けているだけ、それともただ生きるために生きているの。

そんな問いも考えつつ、自分は希望という幻想地味たものには縋れないということだけは気付きながら模索中なのであります。

その意味でラストの千代子のセリフというのは見る人の価値観によって受け止め方も変わってくるのかなと思わされます。

それにしても平沢進さんのサントラも素晴らしいですし、今敏作品も相変わらず古びずに面白いなと。

では。