『マイ・プライベート・アイダホ』
リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスの共演で話題を呼んだ青春ロードムービー。
路上に立ち、男性に体を売って暮らしている青年マイク。緊張すると突然意識を失ってしまう奇病を持つ彼は、自分を捨てた行方不明の母親を捜すため、市長の息子で、同じく男娼のスコットとともに故郷アイダホへと向かう。
同性愛、近親相姦、ドラッグといったショッキングな内容を、詩的な映像を駆使して描いたガス・バン・サント監督初期の傑作。
2014年、フェニックスの遺作「ダーク・ブラッド」(12)公開にあわせ、フェニックス出演作の特集上映でデジタル上映。
最近は久々にスタイルある映画が観たい気分でして。
というのもこの動画がすこぶる良かったんですよね。伊賀さんは青春時代のスタイリングにおいてバイブル的人物ですし、宇多丸さんは映画への興味を拡張させてくれたわけでして。
そしてこの中で紹介されていた一本がマイ・プライベート・アイダホ。
最初に観たのは学生時代だったと思うんですが、とにかくキアヌもリバー・フェニックスもカッコ良くて。
映画の中身もわからず、ただただカッコ良いだけで観ていた気すらする、というのが当時の率直な感想じゃないでしょうか。
それから何度か観返してはいるんですけど、いつ観ても変わらぬ良さとカッコ良さがある。
主演二人以外のスタイリングを見てもそうで、とにかくどのスタイリングもカッコ良い。
ガス・ヴァン・サント作品でも個人的にはベストに近い。というか逆にベストは何なんだ。それはまた考えるとして。
まずキアヌのライダースにグレーのパーカー。これ真似したなぁ。
今観てもカッコ良い。ライダースのレザーのくたっと感が良いんですよね。
リヴァー・フェニックスのこの髪型も良いんですよ。野暮ったくて。オールバックまではいかないけど頻繁には切ってないであろうルーズさがあり、それをかきあげてるだけっていう。
絶対普通にやったら汚らしくなるだけですから。それがこんなにカッコイイというリヴァー・フェニックスの存在感たるや。
この赤いハンティングジャケットにトーン違いの赤いパンツを合わせてインナーが黄色っていうのも雰囲気あるんですよ。
前を留めたり、開けたりっていうのもセンスある着こなしで、気にせず着ている感じが逆にカッコ良いんですよね。
スタイリング以外の点に関してもカットの面白さや演出の面白さなどもあり、観ていて飽きない。
現在地を示す場面転換時の無地カラーベタ打ち。これもこの映画だとしっくりくるんですよね。
「ナイト・オン・ザ・プラネット」に通ずるようなゆったりとした時間が流れる中での場所の転換。その道中を見せずにいきなりというのがおとぎ話でも観ている心地良さもあり、疑似トリップを感じさせる。
ストーリーとしては至ってシンプルながら、その中での複雑な感情であったり、境遇であったりということを織り交ぜ、最終的に目的であったはずの母親探しも断念させられるというあってないような展開。
でも、そういうことって人生には間々あるじゃないですか、予定通りにいかず、思っている通りにも進まない。そんな中で楽しい時も、嬉しい時も、落ち込む時も、悲しい時もある。
その思い出は色褪せず、だからといってそれにしがみついているわけにもいかない。
難しいですよね、人生って。
結局言えることは”ただ生きている”ということなんだなと。
それだけは間違いなくて、それ以上でも以下でも無い。
ラストシーンに関しても色々な見方があると思う中、個人的には願望も込みで、あれはスコットだと思いたいですね。
その直前、ボブとのシーンでスコットが言った「そっち側に戻るまでは会わない」というセリフが妙に頭に残っていて、とすると、戻ってきたのかもしれないと。
堕落によりでなく、本質的な繋がりやマイクに対しての想いなどからそうなったと考えるとそれもまた人生だよなと思えてくるじゃないですか。
とにかくスタイリングのカッコ良さが際立つ作品なので、ロードムービー的にゆったりと観るのに良いんじゃないでしょうか。
では。