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顔のない裸体たち (新潮文庫)

表の顔と裏の顔、欲望というものの実情を考えさせられる。

『顔のない裸体たち (新潮文庫)』

どちらかというと表現が難しめだったり、抽象度が高かったり、理解するのに時間がかかる作品が多い印象のある平野作品ですが、この作品は本当にサクッと読める。

取り扱うテーマ性というか、起きている事象が現実寄りなのでスッと入ってくるんでしょうか。とにかく読み進めて行くほど、興味が尽きない作品なのでどんどんと読み進められていく感じ。

SNSやインターネットというものが当たり前になってしまった現代。

その少し前にあった欲望剥き出しの”性”にまつわる事件のルポ的なお話。

自分自身も学生時代にこういったいわゆるアングラものに興味津々だったことを思いだします。時代的なものもあるんだと思うんですが、あの時代は今ほど情報に溢れていなかったので逆にあんなにアングラに熱狂していたのかも。

ちょっと前にWinnyという映画も公開されていましたが、それも恐らく同時代だったんだろうなというようなタイミング。調べてみるとWinnyが開発されたのが2002年、この本の出版が2008年なんですね。

人って見てはいけないものであるとか、内緒でこそこそといったような禁忌的な物事に対する興味っていうのは常にあるんだろうなと改めて思わされる。それこそオカルトや心霊、都市伝説や噂話といった類もそうでしょうし。

中でも”性”に関するものって欲求の中で特に暴走が止まらないというか、理性で止めることは出来ても、どこかしらで消化せずにはいられないし、火が付いたら止められないと言う点において、断トツな欲求な気がします。

そんな本作のモチーフとなっているのが卑猥な投稿サイトを通じての事件発生までのあれこれ。

普通の人も異常にしてしまう可能性があり、異常な人はその異常性を増していく可能性があるもの。

その過程が本当に興味深い形で描かれているんですよね。

平野作品の好きなところが、言葉選びだったり、表現であったり、さらっと本質を捉えていくところなんですが、ワードセンスの巧みさから、読後も考えさせられてしまうというか、刻まれていくんですよね、脳内に。

すれ違った人を見返してしまうような気付きがあるというか。

どこにでも転がっているような感覚や出来事を抽象度上げて捻ったワードで表現してくる感じ。

本作ではそのワードセンスと興味におけるテーマ選びのバランスが絶妙で、とにかく楽しくあっという間に読めてしまう。

欲を刺激されることの熱狂と時代性、ルポ形式で書かれる客観性を持った文章として読んだ時に見えてくる日常と非日常の境界線。

我々が生きている世界って常に曖昧なライン上に生きていて、善悪などの境界線も非常に危ういもの。常に流し流され浮いている感じに近いんだろうなと思うと、自分でさえ本当にギリギリなんだよなと思わずにいられない。

時代性も感じますし、今読んでも単純な読み物として面白いので気になる方は是非。

では。

 

19一体、恋愛を躊躇させる
24彼女は何処か
43秘密は人を内面化
44秘密とは、そもそも
46時間の区切りに対する
77かつて学校で勉強していた
163愛情があったのか
193乱行が進むほど