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ニュー・シネマ・パラダイス

映画愛が好きで良かったと思える幸せ。

ニュー・シネマ・パラダイス

ニュー・シネマ・パラダイス 4K」6月発売。新マスターでDolby Vision収録 - AV Watch


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シチリアの小さな村を舞台に映写技師と少年の心あたたまる交流を、あふれる映画愛とともに描いた不朽の名作。

映画監督として成功をおさめたサルバトーレのもとに、老いたアルフレードの死の知らせが届く。彼の脳裏に、「トト」と呼ばれた少年時代や多くの時間を過ごした「パラダイス座」、映写技師アルフレードとの友情がよみがえってくる。シチリアの小さな村の映画館を舞台に、映画に魅せられたサルバトーレの少年から中年に至るまでの人生を3人の役者が演じる。

アカデミー外国語映画賞カンヌ映画祭審査員特別グランプリなど、各国で賞賛を浴びた。

映画鑑賞後にまず思いついたのがこれ。

この映画の何が良いって、まず話の本筋が非常に分かり易い。『映画って最高だよね』と単純に思えるところがまずもって最高だし、観終わったあと、映画好きで良かったって純粋に思えるんですよね。

やっぱり映画が好きなのって体験できない何かや気付き、物語を知りたいから観るわけじゃないですか。でもそれ以前に『映画って良いよね』という、単純明快な動機があればこそだと思うんですよ。観れば観るほど失っていきそうになる原点的な感覚ってやっぱり必要なわけで。本作はそんな原点回帰をさせてくれる。

それでいて話の本筋以外にも恋愛や出会い、人の繋がりや、人生、社会背景、自我、そういった、誰もが生きていれば一度や二度はぶつかるであろう壁のようなものも丁寧に描かれているんです。

そこの部分も比較的リアルに表現されていると思っていて、現実の厳しさや、そんなご都合主義なことあるわけない、と思うようなことは起きない。正確には演出として若干入ってくるんですが、そこは枝葉の部分であって、それ以外の根幹はわりとしっかりしている。

このリアルの中でこその娯楽だったり希望だったり、そういった生きる糧になるような部分には忖度無く、ありのまま表現されているところが良いんですよ。

どことなくジブリの様な世界観、そこで流れるサントラもファンタジックな雰囲気を助長していて、とにかく、映画へのわくわくが止まらない。

このわくわくした感覚っていうのもこの作品において非常に重要だと思っていて、出てくるトトは常にキラキラした目で、日常をしっかりと捉えながらも、悲観的にそれを見ていないんですよ。

常に今、そして先を見据えた上で、楽しもうとしている姿勢と眼差し。実際に楽しいわけだから楽しめるという単純なことなんですが、それをこの時代に出来るというのも中々簡単な事じゃないはず、でも、それをやれちゃうんですよ。トトは。

その支えになっているのがアルフレドという映写技師の存在。この関係性と顛末と言うのも本当にリアルで無慈悲。だからこそ人との繋がりは輝きを放つんだろうなと思えてくる。

深い関係を気付くのに年齢も職業も地位も関係無く、それが築けたなら、そこにはもう信頼関係があるという、極めて当たり前の考え方。それが恋人との関係、映画館内での人間関係を見ていても感じられるし、そうした人間関係の多様さや機微に気付かせてくれるところも面白いですよね。

映画館自体の扱いも興味深く、当時、娯楽が少なかったであろう中、映画や映画館というものの存在がどういうものだったのか。それらがどういう立ち位置だったのか、日常がどういったものだったのかといったことを知れるのも面白い。

中でも驚くのが映画の日常性で、この街がそうだったというのもあると思いますが、とはいえ映画が常に傍にあって、人々が集うような場所だったんだなということが一目で伝わってくる。

今は考察ブームというか、SNSやWEBの情報が氾濫しているような状況ですけど、そんなことよりも、ただただ楽しむ場所としての映画館。この感じもやっぱり良い。

これを表現したようなショットも非常に印象的で、トトをはじめ子供たちやスクリーンを観る人の表情を映したフォーカスショットが最高にキマってる。その切り取りだけでもわくわくしていること、楽しんでいることが伝わってくるし、それこそが映画館の必要条件なんじゃないだろうかとすら思えてしまう。

映画館と言う場所が、時代を経て衰退をたどっていくわけですが、それも人生の機微に似ており、アルフレドが言っていた「この町には帰って来るな、絶対に戻って来るな」と言った含みのようなものも、この衰退と変化から感じられる気がするんですよね。

本当は帰ってきて欲しいし、この町も好きなはずなんですよ。でも世界はもっと広いし、人生はもっと過酷なもの。そういった現実を知っているからこそ、感傷に浸っていては前に進めないことも知っている。

そんな経験からくる知恵を授けるという意味で、厳しいかもしれないけど、その姿勢を貫いたアルフレド、最後までその姿勢を貫いたというのもグッとくるシーンでした。

ラストのエロいシーンを繋いだフィルムなんかも憎いメッセージで、遊び心ある仕掛けですよね。個人的にはああいうシーンこそ人生において必要な場面、ようするに『情熱をもって生きろ』と言っているような気がして、これまたそれまでの過程含めてグッとくるんですよ。

恋人のエレナのくだりも良かった。出会いから別れ、そして伏線の回収まで含めて、やり過ぎないところが逆にリアル。とくに最後の話の結びを無理に帰結しないところが良かった。

ルフレドとトトが話していた100日経ってもベランダの下にいたら付き合ってほしいという話の顛末も、その時はピンとこなかったんですが、トトのエレナへの実践を見ると、何となく個人的解釈も出来たような。

エレナがそうだったように本当に惹かれている、本当に好きになるような相手であればタイミングを待つのではなく、無意識的に行動を起こしちゃうんだと思うんですよね。それが無いまま99日目まできたということは、要するにそういうこと。仮に約束の場所に来たとしても、それは切迫感や罪悪感の産物でしか無く、申し訳なさからくる同情的感情で付き合うことになる気がしちゃって。

そう考えるとやっぱり恋愛って『作る』ものじゃなくて『ある』ものなんだなと。

映画が好きな人であれば、映画愛を再認識出来ますし、何よりエンニオの音楽とシーンの相性が抜群で、それだけでも楽しめるのは間違いないです。

では。