未開への地への好奇心赴くままに。
『幻獣ムベンベを追え (集英社文庫) 』
クレイジージャーニーという番組に出ていた丸ゴンこと丸山ゴンザレス。
彼が出ているyoutubeを以前から観ていたんですが、この動画で紹介されていたのを見てから気になり過ぎまして。
そんな彼が尊敬しているというのが本作の著者、高野秀行さん。
生粋の冒険家らしく、丸ゴン以上にぶっ飛んだ経歴と歴訪場所。
そんな高野さんが早稲田大学時代に行っていたというのが怪獣探しらしく、それをまとめた処女作が本作『幻獣ムベンベを追え (集英社文庫) 』というもの。
まずはこれからかなと思いまして、読んでみたんですが、とにかく面白い。
代表作は別にある様ですが、これはこれで初期衝動的な熱量を感じますし、無謀にも見える冒険そのものがとにかく魅力的に描かれている。
出てくる仲間も訪れる場所も、目的すらも完全に冒険としか言いようがない体験談。
冒険家ってこういう人のことを言うんだろうなと改めて思わされますし、何よりその物事に対する姿勢であったり意欲であったりが尋常じゃない。
好きこそものの・・・などと言いますが、本当にそれで、好きだからこそ興味が湧くし、興味が湧くからさらに知りたくなる感じが手に取るように伝わってくる。
そんな原体験的なワクワク感満載の一冊。
この本自体の目的は怪獣探しということなんですが、なぜこんなに惹きつけられるんでしょうね。別に怪獣好きというわけでも無いのに。
まずもって先ほど言ったような熱量や、好奇心が挙げられると思うんですが、誰もがそんな好奇心があるわけでも、冒険したいわけでも無いはず。
多分に漏れず、自分自身もそこまで冒険というものに熱量があるわけでも無いのに、結果的にかなり楽しめてしまった。
これって一つに、誰もが内に秘めた『未知のモノ』への好奇心があるんだと思うんですよね。
しかも今の時代、調べれば何でもすぐにわかってしまうし、情報も分散化、表層化したような浅い知識が溢れている時代。
だからこそ、何かを深堀し、追求し、探求するという一連の行為にロマンを感じてしまうのかなと。
せっかくこの世に存在し、生きているからにはワクワクしたいじゃないですか。
そんな忘れていた何かをくすぐる体験が、興味へと繋がり、すらすら読めてしまう。
それともう一つには高野さんによる文体の面白さがあるのかと。
淡々と記録的に書かれているそれとは異なり、まるでその冒険談を直接聞いているかのようなリアリティと躍動感。
仲間の紹介やエピソード、起きている出来事や気付き。後日談なんかも含めて、徐々に広がりを認識出来ていくような描き方に引き込まれる。これはどうやったら出来るんでしょうね。実体験だからって出来るわけでも無いでしょうし。
生々しさであったり温度感のあるやり取りや心情が見える文体で、口語とも違う独特のリズムがあり、見ていて飽きないんですよね。
実際、起きている出来事が想像以上なことの連続というのもあるんでしょうが、それを想像させるほどの魅力がある文章。そんな部分も高野さんの特徴なのかもしれません。
果たして怪獣は見つかったのか。仲間たちはどうなったのか。
これは読んでもらうのが一番じゃないでしょうか。とりあえず他の著書も少しづつ読んでいこうと思います。
では。