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ザ・プレイヤー

構造の多層感が癖になる。

『ザ・プレイヤー』


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映画会社の重役グリフィンは脅迫状まがいの葉書を送りつけてきた脚本家デビッドを勢いあまって殺してしまう。その後、グリフィンは殺人の事実を伏せたまま、デビッドの恋人ジューンと親しくなっていく。

一方、警察の捜査も進んでいたが……。

ハリウッドから離れて映画製作を行なっていたロバート・アルトマン監督が見事復活を果たしたブラック・コメディ。ハリウッド業界を皮肉った作品ながら、ハリウッドの人気映画人たちが大挙してカメオ出演している。

まず驚かされるのが冒頭ですよね。

8分間の長回しというのも然ることながら、その中で起きていること、フォーカスの移動、入れ子構造になっている作りも含め、とにかく驚かされる。

何も知らずに観ても絶対に驚かされるであろう長回しに、早々から持っていかれること必至です。

出ている役者もカメオ出演含めると、かなり豪華な顔ぶれですし、当時の空気感なんだろうなというところも良く出ている。

たとえまやかしであろうと、煌びやかだった頃のハリウッド界隈の内幕を見せられると、映画好きであれば刺激されるのは必然じゃないでしょうか。

物語自体もミステリー的な面白さと、サスペンス的な緊張感のバランスが良く、サウンドも込みでの不穏さが癖になる。

しかも、それらのおかげでストーリー的な中弛みを避けられているし、ふわふわした浮遊感と緊張感による変な感覚が混在し、独特なテイストに仕上がっていると思う。

冒頭の長回しで暗示されているような入れ子構造は最後まで効いていますし、皮肉たっぷりなブラックユーモアも満載。

特にラストにかけてのシークエンスなんて、まさに当時の映画製作、ハリウッドといったものへの皮肉が凄い。それに賛同するような形でカメオ出演している役者がたくさんいるというのも面白いところですよね。

まあ映画というのはショービジネスであって、内容云々以上に収益的な側面と成功というところをひしひしと感じさせられる。

本来の芸術的な部分が削がれ、空虚感に満ちた雰囲気、映画製作の裏側や当時の空気感そのままに、映画そのものを皮肉る様なストーリーテリングもさすがです。

あのラストは個人的に好みじゃないし、ヒット映画に含まれる要素というのもどうかと思えるものばかり。けれども、それが当時のリアルであったり、ビックバジェットの流儀だとするならば、本当のクリエイティブって何なんだろうと思ってしまう。

むしろそれこそが本作の狙いだと思うので、そう考えるとなるほどアルトマンと思えてきてしまいます。

そんな群像劇と言えばのアルトマンですが、その人間模様も巧みに練られていて、交錯する物語と、背景で蠢く思惑でさえも絡み合っていく作りは素晴らしい。

何が凄いって、それら全ての構造が冒頭で示されているということじゃないでしょうか。あれだけの複雑さを8分間に詰め込むとは。

アルトマン作品はそこまで観てきませんでしたが、これを機に少し掘ってみようかと思わされます。

それにしてもティムロビンスは身長高いですね。195cmは画面越しに観ても大きい。レンジローバーが小さく見えてくるほど。

そしてブラックのレンジローバーカッコ良い。これは個人的に欲しい車リストに入りますね。

IMCDb.org: 1991 Land-Rover Range Rover County SE Series I in "The Player,  1992"

話は逸れましたが、本作は映画好きなら楽しめるであろうギミック盛り沢山で、古き良き映画製作の裏側を楽しめるんじゃないでしょうか。

まあこれを観て良き時代と感じられるとは思えないと思いますけど。まさにそれすらも皮肉に満ちている。

一体誰が脅迫のハガキを送ったのか、個人的にはちょっと思うところがあるんですけどね。その辺の余白を含めて良き映画でした。では。