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空白

ご都合主義なこの世界に。

『空白』

ポスター画像


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「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督によるオリジナル脚本作品で、古田新太主演、松坂桃李共演で描くヒューマンサスペンス。

女子中学生の添田花音はスーパーで万引しようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて死んでしまう。

娘に無関心だった花音の父・充は、せめて彼女の無実を証明しようと、事故に関わった人々を厳しく追及するうちに恐ろしいモンスターと化し、事態は思わぬ方向へと展開していく。

悪夢のような父親・添田を古田、彼に人生を握りつぶされていく店長・青柳を松坂が演じ、「さんかく」の田畑智子、「佐々木、イン、マイマイン」の藤原季節、「湯を沸かすほどの熱い愛」の伊東蒼が共演。

事前知識を何も入れないで行ったらとんでもない展開に度肝を抜かれました。

ポスタービジュアルすらあまり見ていなかったので、鑑賞後に観た時、松坂桃李が土下座してるのを知ったくらい。

ある意味この映画にはこういう映画体験って重要だなと思いつつ、あのタイトルバックの出し方とタイミングは絶望という名の空白しかなかった気がします。それくらい近年稀に見るタイトルバック。

そこまでの演出もそうですが、逆に何が起きるのか、何も起きないのか、そういったことを考えながら観るストーリーはある種のハラハラ感に満ちていました。

さらに言うと鑑賞後の感想もそう、何が描きたかったのか、どういう物語だったのか、そういった虚無感にも似た空白がそこにはあった。

個人的に感じたのは誰の心にも思い当たる節があるであろう『心の空白』、本作はその空白にフォーカスしたんじゃないかなと思った。

ある事件を中心に色々な人物が登場していくんだけど、切り取り方で見える側面が違う。

ただ結局は各個人の身勝手さや振る舞いといった自己都合的なことに全ては集約していくわけで、そこに対しての現実感とやるせなさが混在した感情を抱いた。

出てくるワード一つ一つのじわじわくる破壊力が半端無くて、「偽善ぶるな」とか「今さら理解者ぶるな」とか。

作品の本質を抉るようなパンチラインが豊富に忍ばされており、そこも含めて徐々に効いてくる。なんだかんだ言ってもみんな大事なのは自分だし、自分が間違っているなんて思いたくない、口では何とでも言えるし、ふりをすることもできるかもしれない、だけども最終的には偽ることも出来ないし、心の底からどう思っているかはその人を形作る。

作品内で唯一の希望だったのはある女性の母親。彼女は誰もが言うと予想したことは言わず、そうした振る舞いもせず、ただ真に思う想いを言った。

それは本当に痺れたし、真に他者を想うという姿勢を観た気がした。とにかく偽善と思惑に満ちた世界の切り取りの冥利、SNS時代の一面性を現実世界で見せた作りにハッとさせられた。

加えて、ラストまで観た時に感じた『一つくらいはわかりあえる感』、これもある意味、嘘偽りない事実であって、充と娘の見ていた世界の一致は何もわかっていないと思っていた充に対し、一筋の希望であり、真に想っていることは通じ合える可能性があることを示唆している気がした。

まあこうしたことを説明するよりも、観て感じた方がいい作りなのは間違いないので、是非劇場で観た方が良い気がします。