先が読めず、展開は過激、その果てに・・・
ロサンゼルスを舞台に、日常生活に疲れた平凡な男が理性を失い、数々の事件を起こしていく姿を描くサスペンス・スリラー。
監督は「フラットライナーズ」のジョエル・シューマカー。製作は「プラトーン」のアーノルド・コーペルソンと、「キンダガートン・コップ」の脚本を共同執筆したティモシー・ハリスとハーシェル・ワイングロッド。
エグゼクティヴ・プロデューサーは「ジャック・サマースビー」のアーノン・ミルチャン。
脚本は本作がデビュー作となるエブ・ロー・スミス。撮影は「マイアミ・ムーン」のアンジェイ・バートコウィアク。音楽は「生きてこそ」のジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。
主演は「氷の微笑」のマイケル・ダグラス、「ランブリング・ローズ」のロバート・デュヴァル。ほかに「パリス・トラウト」のバーバラ・ハーシー、「黄昏のチャイナタウン」のフレデリック・フォレスト、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のチューズデイ・ウェルド、「トータル・リコール」のレイチェル・ティコティンらが共演。
驚きしかありませんでした。
映画評などを良く読んでいた高橋ヨシキ氏のお気に入り映画を最近観ているんですが、これは本当に驚愕の作品でした。
マッドマックスは『行って帰ってくるだけ』でしたが本作は『ただ帰るだけ』。
今まで帰るだけなのにこんなにスリリングで、先が読めない展開があったでしょうか。
表面上だけを見ていると主人公のDフェンスは異常なだけだし、破天荒過ぎるように見える。けれども、その背後にあるものや心境を考えると吝かではない部分もあって、それがこの作品を魅力的にしているところなのかもしれないと思わされる。
嫌なことが重なる瞬間って誰にでもあるだろうし、それは社会や他人に対してもそう。というか実際にこの世界は不条理の連続なんですよ。ホントそう思います。だからこそ、そのフラストレーションをあんな感じで爆発させるのはある意味爽快なんですよね。
映画って、そういうたらればが叶えられるところに面白さがあると思っていて、その意味での本作は完璧な仕上がり。
ただ本作がそれだけに留まらないのが『その展開の読めなさ』と『何とも言えないモヤモヤ感』じゃないかと。
展開が読めないのは当然と言えば当然で、ただ帰るのが目的なのにその道中が一筋縄に行かないから。
さらに言えば、普通はそれを誰かが望んでいるものなのに対し、本作は誰も何も望んでいない。本人だけが望む、望みを叶える為に行動しているだけだから一つ一つの行動に、整合性は有って無いようなもの。当然周りにはそんな感情はないわけでして。
日常におけるフラストレーションの感じがリアルで、誰でも心当たりがあるようなことの連続というのも面白い。それに対して、ある意味素直に行動するとこうなるのかといったような発散的な気持ちよさもあって、もどかしさと気持ちよさが混在している世界観。
世の中も他人も不条理だし、思い通りにいかないことが多いのはわかっています。だけど、もうちょっと救いがあっても良いんじゃ無いかと思わされたりして。
主人公と違った形で並列に描かれてる刑事の存在も面白くて、それもまたフラストレーションを別の形でドライブさせる。
最後まで観た時のやるせなさと、色々なことを考えてしまい、ホント人生は一筋縄ではいかないなと思わされる。
冒頭を中心に、イライラを募らせるカットだったり、色々な感情を含んだ表情で終わるカットだったりと、映像としての面白さもある作品なので観てて飽きません。
そもそも、展開が分からないので次はどうなるのかと思っているうちに終わってしまいますが。
ある意味夏の暑さの魔法にかかった、そんな中年親父の物語かと。