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プロミシング・ヤング・ウーマン

女も男も関係無い、埋められないピースをどうするのか、ただそれだけ。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』

ポスター画像


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Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。

ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。

明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。

主人公キャシーを「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが演じ、「スキャンダル」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」や「スーサイド・スクワッド」で知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めている。2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

マジで良かった。

無駄が無いとはこういう事なのかと思うほど見事な脚本やカット。観終わった後、脚本に雁字搦めにされている自分に気づき、映画自身の猛毒性を知ることになろうとは。

映像の見せない部分(男へのリベンジやニーナ自身)のメリハリが効いていて、テンポ良く、謎を内包したまま進むストーリーテリングは素晴らしく心地良かった。

疲れていた状態で観に行ったんですが、ホントあっという間の113分。これは一瞬も目が離せない、というか離したくないと思わせるほどに仕掛けが豊富で画作りや音楽も魅力的。

いわゆるリベンジものなんですが、そこに依存し過ぎないPOPさ、監督自身も「これはキャンディのようなもの」と言っているように本当にトーンだけ観ているとそう思えるような美しく、ファンタジックなカットが多い。

それなのにこの凶暴さとエッジの効いた展開にとにかく驚かされるし、何とも言えない複雑怪奇な感情が後から込み上げてきます。

映像的な決まりの悪さもオープニングから漂っていて、冒頭、男の気持ち悪く映る股間のアップにCharli XCXの『Boys』がかかり、何とも言えない気持ち悪さを感じるところから始まる。


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男の男らしさをはき違えた振舞いだったり、マッチョイズムみたいなものって本当にうんざりするというか、魅せる為になにかをしているということに嫌気がさすと思っていた。

まあ自分も男なのでそういう部分もあるのかもしれないけど、意識的にそういうのは避けているつもりだし、そういう態度ってホント胸糞悪いと感じていたんですよね。

それをぶちのめしてくれるわけだし、その男たちの唖然とする顔は爽快でしかない。

本作で一番最高なのが何と言っても主演のキャリーマリガン。

自分自身も何か大きなものを失った時の喪失感みたいなものは持っていて、それが非常に共感できる形で描かれているし、その葛藤が本当にリアル。ごみ箱を蹴っ飛ばしたり、木にもたれて泣いていたシーンなんかを観た時に、そうだよな、喪失と蘇りのループは本人にしか分かり得ないし、決して逃れられない

愛と憎悪は表裏一体だし、人生の楽しいことと辛いこともそう。

キャリー演じるキャシーのキャラクター像でグッとくるのが『自分を着飾るけど、偽りが無く、ふてぶてしい』ところ。

特にふてぶてしいというのがポイントで、男も女もそうだけど、ふてぶてしいと何が悪いんだろうと思っていて、それは相手の勝手な解釈であって、相手の理想からズレているだけだと思うんですよね。

まあ社会においては他者からの視点が全てだと言ってしまえばそれまでだけど、いわゆるお利口さん。自分の人生は絶対にそんなの嫌だとずっと思っていた。

それを体現し、ふてぶてしいけど誠実な部分もあって、然るべきことは行う。誰かに何か言われるからとか人の目がとか言う前に自分で考え、行動する気概を持つべきだと思う。

その行動に関して、本作でのそれは賛否両論かもしれないけど、絶対的悪といえない振舞いと信念のある振舞いは個人的には感服しかない。

それでいて、逆にファッションという他人からの評価を最も受けそうな部分でも一線を画しているところがカッコ良い。

あくまでも媚びるわけでなく、自分がしたい恰好をし、それでいってカッコ良く、実に似合っている。

人生って誰かの為に生きるわけで無く、自分の為に生き、その中で誰かの為に生きたいと思うならそうすればいいんだと思う。

本作でキャシーがニーナを大切に思い、その想いがずっと続いていたように。

そう考えると何かに『媚びる』ということが一層くだらないことに思えてくるんじゃないでしょうか。