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ブルータル・ジャスティス

不条理こそ人生。

『ブルータル・ジャスティス』

ポスター画像


暴力刑事メル・ギブソンが金塊を巡って犯罪組織と追撃戦!映画『ブルータル・ジャスティス』予告編

「トマホーク ガンマンvs食人族」「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」などでカルト的人気を集める気鋭の監督S・クレイグ・ザラーが手がけたバイオレンスアクション。

ベテラン刑事のブレットと相棒のトニーは、強引な逮捕が原因で6週間の無給の停職処分を受けてしまう。

どうしても大金を必要としていたブレットは、犯罪者たちを監視し、彼らが取引した金を強奪するという計画を練る。ブレットはトニーを誘って計画を実行に移し、ボーゲルマンという男の監視を開始する。そしてある朝、動き始めたボーゲルマンとその仲間を尾行するが……。

ブレット役をメル・ギブソンが演じ、トニー役は「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」でもザラー監督とタッグを組んだビンス・ボーンが務めた。そのほか「戦場のピアニスト」「タクシー運転手 約束は海を越えて」のトーマス・クレッチマンが出演し、極悪非道の強盗犯を演じている。

以前に友人から檄推しされていた作品だったんですが公開されているのがバルト9の21時台のみ。

スケジュールが全く合わず、残念に思っていた所に厚木のkikiさんで1週間のみ上映。以前に行った際に驚かされた驚音上映ということも相まって行ってきました。

冒頭からモザイクシーンに始まり、常に緊張感に満ちた重厚な作り。その重々しさが嫌では無く、妙に心地良かったのは自分もそっち側の排他される側の人間だからということなのでしょうか。

どことなく作中の主人公たちに対する色々な扱いに対して、憤りを感じたり、共感してしまうところが多々ありました。

フィルムノワール的な作り、どこか青みを帯びた冷たい画作りもそういった非情さや暴力性みたいなものが伝わる雰囲気を演出していて、好きな感じだった。

音楽の使い方や選曲も秀逸で、本人が作曲や演奏に関わっているものがほぼほぼ。ノワール的な雰囲気を助長するソウルミュージックの連続に、スリリングでスタイリッシュな最高に自分好みな映画体験を観た。

本作の大部分は会話劇になるわけだけど、その会話劇がまた新鮮で、他の錚々たる映画監督にあるようなものでも無く、でも退屈しない間があるというか、とにかく新鮮だった。

文字通りのブラックユーモアがメチャクチャ衒い無く出てくるし、全くどうでもいい会話もダラダラと話す。気心知れた人同士の会話ってこんな感じで心地いいよなというところを絶妙に突いてくるような作りに心底ハマった。このドライ、なのにウェットな会話が出来る関係性っていうのも憧れるところなんだと思う。

個人的にダイナーが出てくると無条件に上がるところもあって、その意味で本作のダイナー前、ダイナー中、ダイナー後の全てが完璧で、ダイナー最高と思ってしまったのは言うまでもない。

会話が淡々と進んでいくのも程度が良く、わざとらしい演出や脚本のそれが無かったのも本当に絶妙なバランス故に成り立っていた気がする。暴力の伝道師と呼ばれるS・クレイグ・ザラーだけに、その暴力シーンは今まで観た他の映画を凌駕する突発性と必然性によって、あっ、と思った瞬間には終わっている。

暴力って基本的に強者が弱者に向かって振るうものだと思われがちだけど、それってその時のその人の状況や感情によって変わるものだし、それが本編で度々登場するライオンというモチーフによって見事に語られていた気がして、その辺の語り口も見事だなと思った。

カメラワークも独特な距離感で、とりあえず引いてフィックスしたカメラで撮る。その状況が把握できるようでいて細部が把握できない感じが妙に緊張感を生むというか、怖いと思わせる演出的な助けになっていた気がする。全体に漂う緊張感というかヒリヒリ感みたいなものがここまで長い時間(本編は159分)継続する作品というのも珍しかった気がする。

眠くなるシーンは全く無く、むしろいつ何が起きてもおかしくないと思わされている緊張感で、常に覚醒していた。

映画を観ているとたまにこういったAR以上の追体験をしている感覚に陥る時があって、その意味で本作の没入感は半端な吸引力では無かったんだと思う。

日本でも公開規模が少なく、海外でも公開と同時にストリーミングでも配信されるという扱いっぷり。ポリコレ的にとか今の社会情勢にはとか色々な事情はあるんだろうけど、あくまでも映画は創作物であって、その自由性を鑑みて多くの人に観てもらった方がいいんだろうなと改めて思わされた作品でした。

だって純粋に映画に出てくるたばことか酒とか悪いこととかカッコいいし。ただそれをもって現実にそれら全てをやるかといえばそれは別問題なわけで。まあとにかく自分はこういう作品が好き。その一点に尽きるかと思います。