反逆的でベーシックなんてありえるのかと思っていたあの頃。
『We Margiela マルジェラと私たち』
ファッションに興味を持ち出して、聞かない人はいないんじゃないかと思うほど圧倒的な存在感だったマルジェラ。
初めて見た時の印象は『単純にカッコいい』だった。
シンプルで削ぎ落とされてるのに、どこかしらパンキッシュな印象があって、そのバランスに目を奪われた。
当時、ファッションのイメージといえばどう装飾するかだったり、どういった色使いをするかだったりといった、足し算思考だと思っていたところもあって、当時の自分にはかなり衝撃的だった。
この映画の冒頭に出てくる『白はその人を映し出すスクリーンだ』という言葉もその通りだと思うし、マルジェラらしいなと思った。
本作では良い部分も悪い部分も含めてまとめられているし、マルジェラがどのようにブランドを構築していったかみたいなものもわかるので、ざっくりとマルジェラを知るのに最適な作品。
スタッフのユニフォームとして白衣を着るところとか、コレクションを広場で行うところとか、斬新な着方の服を制作するところとか、とにかく衝撃が多かった気がする。
ファッションって、そういうある種の試みというか実験的なところが絶対に必要だと思っていて、それが無いとファッションとは言えない気がしている。
逆に言うと、それを経験して、突き詰めて考えた結果のシンプルさがマルジェラにはあって、そういうシンプルさはどこか特異な感じたというか、洗練された空気感を纏っているので好きなんだと改めて思う。
この映画を観て一層マルジェラが好きになったし、こだわることの重要性みたいなものも感じられて凄く良かった。
ただ、終盤で語られていた、『マルジェラは決して服作りを楽しんでいなかった』という葛藤や生みの苦しみみたいなものがあったのは驚きだったし、同時に、やっぱりそういう感覚はあるんだろうなと思ったりと、その部分も含めて腑に落ちた感じがした。
とにかくマルジェラは最高にカッコよくて、自分のファッション感に影響を与えたのは間違いないわけで、いい意味でその裏側も知れたのは良かったと思う。
そしてこれまた改めてだけど、ファッションって飽きないし最高だなと思う。