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ラストレター

考え、悩み、書き、残るものとは。

『ラストレター』

ポスター画像


映画『「ラストレター」』予告【2020年1月17日(金)公開】

「Love Letter」「スワロウテイル」の岩井俊二監督が、自身の出身地・宮城を舞台に、手紙の行き違いから始まった2つの世代の男女の恋愛模様と、それぞれの心の再生と成長を描いたラブストーリー。

姉・未咲の葬儀に参列した裕里は、未咲の娘・鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内状と未咲が鮎美に遺した手紙の存在を告げられる。

未咲の死を知らせるため同窓会へ行く裕里だったが、学校の人気者だった姉と勘違いされてしまう。そこで初恋の相手・鏡史郎と再会した彼女は、未咲のふりをしたまま彼と文通することに。

やがて、その手紙が鮎美のもとへ届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎と未咲、そして裕里の学生時代の淡い初恋の思い出をたどりはじめる。

主人公・裕里を松たか子、未咲の娘・鮎美と高校生時代の未咲を広瀬すず、鏡史郎を福山雅治、高校生時代の鏡史郎を神木隆之介がそれぞれ演じる。

久々でしたが相変わらずの岩井俊二でした。

岩井監督作品を劇場で観たのは初だったんですが、他の作品に観られる空気感は変わらず、瑞々しさが際立つ作品でした。

その瑞々しさを担っていたのがあくまでも自然に撮られた風景や、背景に流れる水、セミの声。それにプラスして少女達が出てくればこの時点で岩井俊二の真骨頂は決まったも同然です。

『手紙』というものがキーワードになる作品でしたが、その特異性みたいなものの描き方が巧みでした。

現在と過去を繋ぎ、物質的空気感を残したまま残るもの。

SNSやメール、ラインなどが当たり前になってしまった現代では到底考え得ないやり取りの手間と間。そういったものを手紙にしか出来ない力で説得力を持たせていたことに感動すら覚えました。

その間を埋める演出も見事で、回想やそれぞれの日常を描くことで文字通りの間を埋め、同時に物語の間も埋めていく。

観ているこちらとしては段々とピースがハマっていくパズルのように物語の全貌が見えていきます。

ショットも独特な空気感のものが多く、手持ちで安定しない感じや遺影からの視点、俯瞰したものや、ラストでの鮎美と母親(遺影)を映したものなど、映画自体の緩やかな不安定さみたいなものを良く表現していたように思います。

キャスティングも抜群で、鮎美と颯香を演じた広瀬すずと森七菜は抜群でした。

高校時代の裕里と未咲を演じた二人がそのままその二人の娘を演じることでのシンクロが想い出と重なることでハッとさせられたり、機微な仕草や言動から意識させられる作りは素晴らしかったです。

岩井俊二の作品というと『少女』『IF』というものが多い気がしますが、本作でのそれらも満載で、その儚げで透明感のある、それでいてもし違う道があるとすればというような独特の感覚は観るだけである種のファンタジーへと連れて行ってくれるような気がします。

とにかく一場面一場面が美しい。その一言で片づけられてしまう気すらしてしまいます。

誰もが一度は思う『IF』。それでも戻れないことはわかっていて、だからこそその時間はかけがえのないものだということに気付かされるラストは何とも言えない感情でいっぱいになりました。

心が慌ただしく、時間や情報に追われる今だからこそ、見つめ直す必要があるものがある気がします。

ラストレター (文春文庫)

ラストレター (文春文庫)