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あん

とにかく丁寧にじっくりと取り組む。

「あん」

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映画『あん』予告編

萌の朱雀」で史上最年少でカンヌ国際映画祭新人監督賞を受賞、「殯の森」ではカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美監督が、2014年に旭日小綬章を受章した名女優・樹木希林を主演に迎え、ドリアン助川の同名小説の映画化。

あることがキッカケで刑務所暮しを経験し、どら焼き屋の雇われ店長として日々を過ごしていた千太郎。ある日、店で働くことを懇願する老女、徳江が現れ、彼女が作る粒あんの美味しさが評判を呼んで店は繁盛していく。しかし、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことで客足が遠のいてしまい、千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなる。おとなしく店を去った徳江だったが、彼女のことが気にかかる千太郎は、徳江と心を通わせていた近所の女子中学生ワカナとともに、徳江の足跡をたどる。

千太郎役に永瀬正敏、ワカナ役には樹木の孫娘である内田伽羅が扮した。

久々に骨の髄までガツンと来た。

広瀬直美監督はホントに風景描写と心情描写が上手い。

最近、色々な情報のスピードや日常の慌ただしさに疲れてきていて、何となく気になって観始めた。こういう自分の感覚って非常に大切だと思っていて、意外にそれは外れない。

本作も多分に漏れず、凄く響いた。

人生の目的って詰まる所何もないわけで、それでも何か理由が欲しいと思ってしまうのが人間というもの。

社会で生きているということは主体的、自主的に何かを考え、行動し、その結果何かを得る。何となくそれが先行して動きすぎて疲弊し疲れ切ってしまっているのが現代の気がしていて、本作はそんな人たちに、「そんなことする必要ないんだよ」と語りかけているような映像であったり、音であったり、セリフであったりが多かった気がした。

受動的に色々なことをただ感じる。

それ自体が目的で、結果はその後についてくる。そんな見方を提供してくれた気がした。

中学生が騒ぐ声をうるさいと感じること、あんの味よりも利便性をとってしまうこと、人に話しかけられるのを煙たく感じること。

全て受け手の感情次第で変わること。そういった日常の一つ一つのことと丁寧に向き合っていくことが心を浄化し、周りも浄化していくことに繋がる。

それらの過程があんを作るという工程全てになぞらえていて繊細で心地良い。

本作で特に気になったのが環境音と写実的な画。

物語の随所で生活の環境音が入り、常に周りにあるはずの音が何故かかけがえのないもののような気すらしてくる、それに呼応するように日常の当たり前の光景が写実的な画として美しく、眩しく見えてくる。

日常を送るということそれそのものが有難く、幸せな事なんだと改めて思わされる。

主演の樹木希林永瀬正敏の関係性も素晴らしく、特に樹木希林の深みしったる演技力には脱帽した。自分自身がばあちゃん子ということもあるだろうけど、「古き良きを知り新しきを知る」そういうものの良さに気付ける人間で本当によかったと思う。古いものを邪険にし、目先の欲しか見ない、そういった人や社会に飲まれたくないと強く感じた。

その最たるものである差別や世間。

本質を見極めたうえで自分の意思で自分なりに考えて歩む、そんな当たり前で凄く難しい問題を突き付けられた気もした。