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ファーストマン

観るというより体験するという感覚。

「ファーストマン」

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ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督&主演ライアン・ゴズリングのコンビが再びタッグを組み、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマ。

ジェームズ・R・ハンセンが記したアームストロングの伝記「ファーストマン」を原作に、ゴズリングが扮するアームストロングの視点を通して、人類初の月面着陸という難業に取り組む乗組員やNASA職員たちの奮闘、そして人命を犠牲にしてまで行う月面着陸計画の意義に葛藤しながらも、不退転の決意でプロジェクトに挑むアームストロング自身の姿が描かれる。

アームストロングの妻ジャネット役に、「蜘蛛の巣を払う女」やテレビシリーズ「ザ・クラウン」で活躍するクレア・フォイ。そのほかの共演にジェイソン・クラークカイル・チャンドラー。脚本は「スポットライト 世紀のスクープ」「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」のジョシュ・シンガー

自分自身は映画を観る前にほとんど情報を入れないで観に行くんですが、この映像体験ということがチラシにダイレクトに書かれていることに驚きました。でも、それほどに体験としか言いようがない映画でした。

冒頭から凄まじいシーンに始まり、怒涛の演出。時代の違いとはいえ、航空機の設備の違いに唖然とします。その後出てくる宇宙船などのシーンも驚きの連続で、こんなブリキのような材質、ボルトを軋ませているような機体で宇宙などに行けるのか。コックピットの窓から見える視野はこんなに狭く、コックピット自体も棺桶の様な狭さで、身動きが取れずに何日間も大丈夫なのか。

当然と言えば当然ですが、インターネットも無い、技術も今より劣る、材質等も同様、そんな時代に実際に宇宙に行くということがどれほど無謀なことだったのかというのを思い知らされます。

本作の面白い所が、この月面着陸を華やかに描いていない点です。

主人公であるアームストロングの主観としてのホームドラマ的に撮られていて、逆に新鮮で一見つまらなく映ります。でも、実際の宇宙飛行士も一般の人だし、何か偉業を達成する人も特別な人とは限らない。そんな当たり前のことを描きながら、月面着陸というとてつもないことを成し遂げてしまう。その過程を知り、疑似的に体験することで、人生とは、本当に何かを成し遂げるのに必要な資質とは、そういったことを考えさせられます。

結論から言うと、本作の月面着陸に対して、アームストロングの強い目的などは全くわからなかったです。

でも実際強い意志や目的をもって目標を達成している人の方が少なくて、責任感や義務感で物事を遂行している人の方が多いんじゃないかと思わされます。そういった点に対しても大衆の言動や行動を見せる形で上手く演出されており、皮肉めいていて良かった気がします。

アームストロング自体も感情を全く表に出さない人だったらしく、その辺もこの映画の起伏の無さに影響しているのかもしれませんが、内省的な問いを感じさせるところにチャゼル監督らしさを感じました。

今までのチャゼル映画からすれば音楽的演出が少ない本作ですが、逆に無音の使い方が秀逸で、月面到着時の瞬間は映像、音、体験感、全てが相まって本当に感動しました。その点のカタルシスに関してはナンバーワンかもしれません。あのシーンはホント無重力になったかのように劇場が圧縮され、静まり返り、固唾を飲んで見守ったのが印象的です。調べてみるとそこまでのシーンは16ミリフィルムで撮っていたらしいんですが、月面のシーンは70ミリフィルムで撮られており、その効果が存分に出ていました。あれを観るためにも映画館に足を運ぶ価値ありです。

IMAXで観たんですが、とにかくDVDなどでは絶対に体験できない没入感。スマホ等で何でも観れる時代にあって、こういった映画館の強みを強く感じました。

月面着陸時の有名なセリフである「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」と言う言葉。劇中で政府の思惑や国家間競争、大衆の誹謗中傷等の混沌とした状況でも、自分の軸をぶらさずに進んできた一歩、その積み上げの果てに到達する一歩と考えると月面に到達した瞬間は感慨深いものでした。

とにかく観るより、感じ体験する。そんな映画かと思いますのでぜひ劇場で体験してほしいです。