写真というものを改めて知った気がした。
「SCOOP!」
『バクマン。』の大根仁監督・脚本、福山雅治主演によるカメラマンと記者の物語。ある事件をきっかけに報道写真への情熱を失い、自堕落な日々を過ごす凄腕カメラマン・都城静。ひょんなことから彼は新人記者・行川野火とコンビを組むことになり…。
単純なパパラッチの話だと思ったら大間違いでした。
事前に良かったとの評判は聞いていた為、そこまで単純には考えていなかったのですが、所々で足元をすくわれた感じでした。
物語自体は有り触れたパパラッチもの。なのに場面場面からその時々の緊張感がリアルに伝わってくる感じで、非常にスリリングな作品でした。
冒頭の喘ぎ声が微かに聞こえてくるシーンに始まり、野火が最初に携帯でスクープを撮る瞬間なんか、何とも言えない緊張感に満ちていました。
進行に無理があるような箇所もいくつかありましたが、それを上回るテンポの良さ。あっという間の2時間でした。
福山はこういう汚れ役みたいなのがホント似合いますね。最近では綺麗どころをやることが多い気がしますが、こういった役の方が個人的には好物です。
役者でいうと二階堂ふみも好演でしたが、とにかくリリーフランキーが怪演過ぎてキマッテル。
「凶悪」などでも凄味のある演技をしていましたが、今回の方が確実にやばい。こういった演技ができる人って本当に限られているんだろうなと思った次第です。直近だと「ダークナイト」のヒースレジャー以来じゃないでしょうか。それくらい狂ってました。
終盤で静が写真を始めた経緯、ロバートキャパについて語るシーンなんかは妙な説得力がありカメラ、写真について考えさせられました。これは意表を突かれた感じでした。そこまでフォーカスされていた印象はありませんでしたが。
それでも最後に写真を撮りに行くシーンで持って行ったカメラはフィルムカメラ。
やっぱりフィルムにはデジタルには出せない、独特な価値があるように思います。デジタルよりも1枚にかける時間がかかるフィルム、さらにそこから目にするまでにかかる時間を考えるとフィルム写真は「等価交換の産物」のようだなと思いました。
自分がかけてきた思いを焼き付ける行為。デジタルでもいいけど、デジタルで連射して撮ってきた写真との対比からフィルムの重みを感じられた気がしました。
「こっちは趣味だから」といって野火の写真を撮ったこと、チャラ源のピンボケ写真を撮ったこと。これらをデジタルで撮っていないところからも写真としてのこだわりの違いを感じました。
本作を観終えて最後に思ったこと、「ジャーナリズムとは本来、ジャーナリストが伝える思いそのものであって何かに規定や束縛された行動ではない」。
社会で良くある本音と建て前。それに埋もれて本質を見失うことは多々ありますし、本作でもそうした対立構造が何回も出てきます。
でもそれってジャーナリズムの本質ではないんだろうなと思いました。正直ジャーナリズムを何も知りませんが、観ていて感じたところです。
自分の思いを伝える大切さ、写真を撮る1枚の重み、学べるところは多かったと思います。
まあそんなことを考えずにエンターテイメント作品としても秀逸でしたが。