自分は人生に何を求めるのか。
『風立ちぬ』
宮崎駿監督が「崖の上のポニョ」(2008)以来5年ぶりに手がけた長編作。
ゼロ戦設計者として知られる堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄の人生をモデルに生み出された主人公の青年技師・二郎が、関東大震災や経済不況に見舞われ、やがて戦争へと突入していく1920年代という時代にいかに生きたか、その半生を描く。
幼い頃から空にあこがれを抱いて育った学生・堀越二郎は、震災の混乱の中で、少女・菜穂子と運命な出会いを果たす。やがて飛行機設計技師として就職し、その才能を買われた二郎は、同期の本庄らとともに技術視察でドイツや西洋諸国をまわり、見聞を広めていく。そしてある夏、二郎は避暑休暇で訪れた山のホテルで菜穂子と再会。やがて2人は結婚する。菜穂子は病弱で療養所暮らしも長引くが、二郎は愛する人の存在に支えられ、新たな飛行機作りに没頭していく。
宮崎監督が模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」で連載していた漫画が原作。
「新世紀エヴァンゲリオン」の監督として知られる庵野秀明が主人公・二郎の声優を務めた。
松任谷由美が「魔女の宅急便」以来24年ぶりにジブリ作品に主題歌を提供。第70回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、第86回アカデミー賞では長編アニメーション部門にノミネートされるなど、海外でも高い評価と注目を集めた。
ジブリと言えば子供の頃見ていた記憶しかなかった。それがふと見たくなった。
中でも気になったのが『風立ちぬ』。
なぜと言われれば、特段の理由も無いのだけど、それこそ感覚的に引き寄せられたのかもしれない。観終わっての率直な感想は『良くわからないけどなんか惹かれる』だった。そして数日後にまた観返し、その感覚が確信に変わった。『これは自分だ』と。本作の主人公である次郎は美しいものに目が無く、自分の興味外に関しては無頓着。最初観た時に感じたある種人でない感じというか、心無い感じというか、そういうことかと認識した。
コロナ渦でタイムリーに考えていた『生きる』ということ。人は一人では生きられないとはよく言ったもので、生きること自体はできても、一人ではその意味を見失ってしまう。そういった意味でも本作に出てくる次郎と飛行機の関係性、次郎と菜穂子の、次郎と友の、そういった様々な関係性の中でこそ『生きる』というものが形作られるのだと思った。
個人的に次郎と菜穂子の危なっかしいんだけど共にあることで得られる『幸せの形』みたいなものには心打たれた。
そして久しぶりにジブリ映画を観て感じた作り込みの凄さ。仕草や言葉、表情一つとっても、色々なシーンやストーリーとの結びつきがあって凄い作品だなと思った。
同時に改めて気付いたのが、万人受けするし、みんなが知っている宮崎監督作品の異質さも浮き彫りになった。大衆向けにぱっと見は見えてしまうのに、描かれているテーマや作り込みに関して認識している人は数少ないと思う。そういった矛盾というか表面上の認識みたいなものも相まって今の気分というかバシッとハマったんだと思った。
いずれにせよジブリというものの見方が変わったというのは大きな収穫で、他の作品含め今一度観直していこうと思う。ちょうど何作品かはリバイバル上映もされているわけだし。