ポップで狂気的でセンシティブ。
『PERFECT BLUE(1998)』
アイドルから女優へ転身を果たした主人公が遭遇する、悪夢の日々を描いたサイコ・スリラー・アニメーション。
監督は「MEMORIES/彼女の想いで」の今敏。竹内義和の原作を基に、テレビ・シリーズの『ねらわれた学園』の村井さだゆきが脚色。撮影を「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版」の白井久男が担当している。声の出演に、「天地無用! 真夏のイヴ」の岩男潤子ら。
FANT・ASIA'97 PUBLIC PRIZE FOR THE BEST ASIAN FILM(グランプリ)受賞作品。R指定。
キャラデザインが今敏と江口寿史のコラボ、そしてこのビジュアル↓に惹かれて観てみることに。
正直予想以上でした。
今敏作品は『東京ゴッドファーザーズ』くらいしか観たことが無かったんですが、独特な世界観と映像美が印象に残っていた。それくらいの感覚でしたが本作は完全にやられました。
本作の何が凄いって、そのポップさと狂気さのバランス。
当時の1998年にこのサイコパス感の表現とそれを映像的に見せるバランス感覚。この辺が凄く前衛的だと思いました。
アイドルと歌手、そして女優という、ある種アイコン的な一人の女性にフォーカスを当て、その境界線をぼかす。そして時間的にもタイムリープ、妄想といった形で時系列もぼかす。そして本人の思考、周囲の人の思考もぼかすことで、全てが混沌とした、それでも確実に何かは存在する世界が出来上がっている。
そのバランスが秀逸で、怖く美しい。
観ているこっちもどれが現実なのかが分からなくなってくるほどだし、主人公未麻のかわいらしい一面と狂気的な一面がわからなくなってくる。これが本当にわからなくなってくるところがこの作品の怖い所でもあるんだけど。
キャラデザインが江口寿史ということもあり、わかっているなという女性キャラの描き方はさすがですし、今でも廃れない、『いいな』と思える女性アイドル像を描けていると思う。
完全に個人的ですが、やっぱり江口さんの描く女性は好きです。瑞々しいんだけど人間味のある実際にもいるんだろうけど、ほとんど出会うことは無い女性像の描き方はピカイチ。
そういった映像的なバランスとキャラ的なバランスが見事でした。
とにかく怖いし、奇妙なんだけど惹かれるポップさを内包している。これは確実に名作だと思います。
余談ですが、タイトルの『パーフェクトブルー』。これは原作の原題から持ってきているようですが、そこからの脚色等により、実際の本作ではそのタイトル要素は無いみたいです。
何かのインタビューで今さんがおっしゃってましたが、その辺も含めて不可思議感がいいフックになっている気がします。
良い作品は狙ったこと以上に偶然の産物が功を