幸せの形は人それぞれでそれでいい。
「マインド・ゲーム」「四畳半神話大系」「ピンポン THE ANIMATION」など個性的な作品で知られ、「夜は短し恋せよ乙女」も手がけた湯浅政明監督の完全オリジナルによる劇場用長編アニメで、人間の少年と人魚の少女の出会いと別れを丁寧かつ繊細な描写でつづった。
フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門に出品され、日本映画としては「平成狸合戦ぽんぽこ」以来22年ぶりとなる最高賞のクリスタル賞を受賞した。
寂れた漁港・日無町で、父親や祖父と3人で暮らす男子中学生カイ。両親の離婚が原因で東京からこの町へ引っ越してきた彼は、両親に対し複雑な思いを抱えながらも口に出すことができず、鬱屈した日々を送っていた。
そんなある日、クラスメイトの国男と遊歩に誘われて人魚島を訪れたカイは、人魚の少女ルーと出会う。カイは天真爛漫なルーと一緒に過ごすうちに、少しずつ自分の気持を言えるようになっていく。
しかし日無町では、古来より人魚は災いをもたらす存在とされており……。
映像研には驚かされたし、この自粛中に改めて観返したけど本当に凄いアニメだった。
最近は何故かアニメに物凄くハマっていてのこの作品。
映像研の映像の素晴らしさは目を見張るものがあったが、何といっても独特の色使い。この辺に惹かれて湯浅監督作品を観てみることにしました。
最初に観たのは『夜は短し恋せよ乙女』だったんだが、正直これはハマらず。アニメーションとしての見せ方や色使いに関しては共感できる部分も多かったものの、物語としては少々退屈で、ある種のPV的な印象を抜け切れなかったというのが率直な感想でした。
そして次に観たのがこの作品。
これは最高でした。冒頭の映像の見せ方、アニメーションとしての美しさを感じさせる画作り。そして何と言ってもそこからタイトルバックまでの流れが完璧。
タイトルが出た時には既にあちらの世界に引き込まれていました。
設定として破綻している部分も多少なりともあったけど、それもひっくるめて世界観に乾杯と言いたい。
アニメーションの美しさであったり表現の多様さ、着色のバランス感覚などが観ていてとてもドラッキーで最高にハッピーな映像体験。
物語の本質自体も考えさせられるものだし、その仕掛けも狙い過ぎてないところが凄く良い。
人魚というモチーフが出てくるとどうしても人生の長さや種族の壁のようなものに主題が当てられてしまいそうなものだけど、本作ではそれらを意識しつつ、それでいてそれ以上に大切な『愛情』や『幸せ』といったものにフォーカスしている点が良かった。
たとえ種族が違ってもそれらは本質的に変わらないということ。人は全てが見えていて良き行いをしようとしているように見えて、実際は何も見えていないということ。こういった点を素直な心で示唆するルーの存在に胸打たれました。
キャラデザインも『ねむようこ』さんということで実に好みなビジュアルでした。やっぱり女の子を中心にファッショナブルなセンスに溢れていて良かったです。
まぁ本作はとにかく映像美。単に綺麗な画の作品は多々あれど、ここまでサイケデリックで独特な美をアニメーションで表現できているのはそれだけで一見の価値ありかと思います。