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許されざる者

過去の自分と今の自分は同じであって同じでない。 

許されざる者


日曜洋画劇場 / 許されざる者

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クリント・イーストウッドが、師匠であるセルジオ・レオーネ監督とドン・シーゲル監督に捧げた異色西部劇。

1870年代の米ワイオミング。かつては無法者として悪名を轟かせたウィリアム・マニーだったが、今は若い妻に先立たれ、2人の幼い子どもとともに貧しい農夫として静かに暮らしていた。そこに若いガンマン、キッドが立ち寄り、賞金稼ぎの話を持ちかける。

共演にジーン・ハックマンモーガン・フリーマンリチャード・ハリス。92年度のアカデミー賞では作品、監督を含む4部門を受賞した。

冒頭のワイドショットの時点でレオーネを思わせる作品。

毎度のことながらイーストウッドの音楽的センスは抜群だし、衣装のバランスも非常にいい。だけど本作にはカッコ良さというか以前のイーストウッドの雰囲気はあえて削ぎ落とされている感じでその意味は観終わった後には納得に変わっていた。

本作の面白いところが物語の作り方。西部劇であって、全くその体をなしてない作品に仕上がっている。勧善懲悪で銃撃戦や決闘が見せ場というのが普通の西部劇だけど、本作は全くその感がを感じない。

まあそれが意図なんだろうし、観終わったころにはそれで良かったんだと気付かされるところに脚本の冥利も感じた。

主人公であるイーストウッドも昔はかなり有名は無法者だったのかもしれないけど、今では豚を追い、銃の腕も鈍り、馬にもうまく乗れず、身体も弱くなり、酒も飲まないし見た目にも覇気は感じないというダメキャラ設定。その他のキャラも同様に何かしらアンバランスな何かを持っていて同じく全員ポンコツ。物語自体も思うようには進まないわけで、とにかくいちいちもどかしい。

物語がうまく進まないという点でいうと、作中に出てくる物書きが書いている自伝もそうで。語られる人や事実との相違によってうまく進まないところがあって、本作自体の構造に似ており、皮肉のような面白さを感じた。

とにかく本作は皮肉や不条理のオンパレード。それも劇的な感じで描かれるわけでは無く、ただ淡々と描かれている。その辺含め我々個人の人生に似ているところがあって、色々と考えさせられた。

その中でも本作を観ていて一番感じたのが、「かつての自分との向き合い方」。

誰にでもかつての自分や自分と関わる他者がいる中で、それとどう向き合い、何と向き合わないかを決めていっている。

その中で栄光やプライド、正義や理想、愛や人生といったものを考える際、頭の中のそれと現実にズレが生じたり、立場が変われば見えてくる景色が変わるということが当然起きてくる。

それが作品内で良く表現されていると思うし、本当の自分を認識するのって難しいなと思わされる。

殺しを依頼した娼婦も自分が依頼したのに実際に殺されると、本当に殺すと思わなかったと言ってみたり。自分の利益のために人を殺すような保安官も自分が殺される間際にはこんな死に方をするとはと言ってみたり。賞金稼ぎといきっていた青年も実は人を殺したことが無く、本当に殺してからは怯んでみたりと、全ては各々が描く理想と現実のギャップから生じている。

ラストシーンでの主人公の変容も、本人が本来持っていたものであって、それを呼び覚ましたというか呼び覚まさざるを得ないほどに追い詰められて結果なんだと思ったし、言い換えれば過去の自分との向き合い方を変えただけとも言えるわけだし。

更にエンドクレジット前の亡くなった嫁の母が訪れた時の話で、「西海岸で商売に成功し・・・」というところも同じで、人は変わると決めた時から変われるわけだし今の自分との向き合い方を変えただけとも言えるわけで。

とにかく許されざる者が誰であるかは誰から見るかで変わる視点で、そこには今の自分から見る過去の自分も含まれるということ。

将来死の際になって自分を回想した時、許せる自分でありたいと強く思った作品でした。

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許されざる者(1992)(字幕版)

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