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海よりもまだ深く

映像のリアリティバランスがホントいい。

海よりもまだ深く


映画『海よりもまだ深く』予告編

海街diary」「そして父になる」の是枝裕和監督が、「歩いても 歩いても」「奇跡」に続いて阿部寛と3度目のタッグを組み、大人になりきれない男と年老いた母を中心に、夢見ていた未来とは違う現在を生きる家族の姿をつづった人間ドラマ。

15年前に文学賞を一度受賞したものの、その後は売れず、作家として成功する夢を追い続けている中年男性・良多。現在は生活費のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳していた。別れた妻・響子への未練を引きずっている良多は、彼女を「張り込み」して新しい恋人がいることを知りショックを受ける。ある日、団地で一人暮らしをしている母・淑子の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は、台風で帰れなくなり、ひと晩を共に過ごすことになる。

主人公の母親役を樹木希林が好演し、共演にも真木よう子小林聡美リリー・フランキーら豪華な顔ぶれがそろう。

設定も然ることながら、出てくるもの、出てくる場所、起きることなどのリアリティラインが心地よく、物語にすんなり没入できる。これをどの作品でも自然に出来てしまう是枝監督には驚きしかない。

主人公である阿部寛が作家志望であるということもあって、中二病的な言動、行動が見事にハマっている点だけ観ていても面白しいし、作品の為なのか出てくるフレーズにも名言めいたものが多くて、それもまた良し。

美術なんかも本当に凝っていて、ありそうな感じ、というか絶対にある感じが満載でそれを追うのも面白い。

カットも独特な箇所が結構あるけど、個人的には場面転換するときの唐突なフェードアウトがオムニバスっぽい印象を受けて、好きなテイストでした。人生自体がオムニバスの集合体であるところともリンクするし、何となくこの感じが好きなんです。

観ていて思ったのが、登場人物全員が何かしらで関係を持った人であり、その人の実人生に何らかの影響を及ぼしている、それは受け手としても同様で、人生そのものがそういったことなんだろうなと思うと感慨深かった。

取り交わされるやりとりで非常に印象的だったところをいくつか挙げると

「幸せは何かを諦めないと得られないもの」

「小さい世界に感謝」

「こんなはずじゃなかった」

他にもかなり出てきますが、この辺はズシっときました。とりわけ「こんなはずじゃなかった」という言葉は出てくるシーンもタイミングも言う人も絶妙で、これ以上ない程の重みを持っていた気がします。

誰しも一度は思ったことがあるであろう、この言葉。そう思ってしまうことは仕方が無いし、絶対に思う時は来るだろうけど、それでも本作のラストのように前を向いてできる限りの、少しの努力と考え方をもって生きたいと思う。

見えないもの、失ったものがあるのを理解した上で、見えるもの、得たものを大事にして。海よりもまだ深くにそれらは絶対に蓄積されているはずだから。