スタイリッシュかつミステリアス。衝撃に次ぐ衝撃が次から次へと当たり前のように押し寄せる。
「犬神家の一族」
名探偵金田一耕肋を主人公にした横溝正史の同名小説の映画化で、湖畔にそびえる犬神邸に次々と発生する怪奇な連続殺人事件に挑む金田一耕肋の活躍を描く。
脚本は「反逆の旅」の長田紀生と日高真也、市川崑の共同、監督は「妻と女の間」の市川崑、撮影は同じ「妻と女の間」の長谷川清がそれぞれ担当。
誰もがお馴染みの映画であって、観たことがあり、内容を知る人はその馴染みほどはいないはず。
自分もそのうちの一人だったのですが、日本映画名作ブームが来ている今の自分にはぴったりのタイミングでした。
正直映像の古臭さなどから敬遠しておりましたが、すぐに大きな間違いだったことに気付かされます。
現代に通じる映像手法であったり巧みなミステリーの構成であったりと身につまされる箇所が多々あり、市川昂という監督の凄さを思い知らされました。
冒頭のクレジットなどは完全に庵野監督に影響を与えているであろうスタイリッシュかつ無秩序、それでいて力強いフォントでのクレジットだったし。
各シーンを観ても非常に写真的な構図が綺麗に計算されたものが多く、色の濃淡も見事で、どれだけこだわったらこんな映像を2時間以上も撮り続けることが出来るんだといった印象でした。
セリフのテンポも今でいうラップに近しく、心地よいBPMを刻んでいるかのようなやり取りで、とても1970年代の映画とは思えないテンポ感。それに呼応するようにカットが切り替わっていく様子なんかも相まってミステリーなのにとにかく軽い仕上がりに。
そんなミステリー要素は露骨すぎる部分と伏せてある部分の割合が絶妙で、最後まで結論には至らない際の状況を保っているところが凄く、こいつが犯人かと思っては違いの繰り返し。
時折流れるサントラなどはイタリアのマフィア映画を彷彿とさせますし、出てくる描写も日本であって日本に非ず的に見える部分もあったりします。
とにかく細かいところまで作り込まれていることが観れば明らかで、それ故に何度も観返したくなる作品なのかもしれません。
映画として、映像として観ておく作品なのは間違いないです。ちなみに観るなら間違いなくオリジナルの1976年版を観ることをおススメします