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自分を紡ぐ物語

マンチェスター・バイ・ザ・シー

観る気は無かったはずなのに無性に観たくなる映画って時々あるんですよね。それが本作「マンチェスターバイザシー」でした。

ポスター画像

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ケイシー・アフレック主演!映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』特報

特報にすごい惹きつけられて、そこから観たくなっておりました。「とにかく観てみてくれ」それくらい特報の音楽が良いです。本作では使われてなかったのですが情緒的でピッタリな気がしました。

正直最初はイギリスの映画だと思っていました。まぁマンチェスターと聞いたら反射的にイギリスを思い浮かべますからね。実際はアメリカ、マサチューセッツ州の小さな町です。ここを舞台に物語が展開していきます。

終始漂うグレーがかった映像。これがなんだか心地良く染み込んできます。映画の構成はブルーバレンタインにも似ていて過去と現在を所々行き来します。ただし過去との境目は映像上もシームレスに繋がっていて、正直混乱する場面もありました。

でもそれって本来とても自然なことで、我々にしても人生ってシームレスになんですよね。

さらに言うとこの映画はアクションやサスペンスといったハラハラ、ドキドキは一切ありません。かといってヒューマンドラマにありがちな安易な感動表現もありません。あるのは人生という誰にでもある一件なんの変哲も無い日常。ただそれが本当はそれが一番ドラマチックで深い体験、そんな当たり前に気付かせてくれます。

本編で主人公であるケイシーアフレックの演技は素晴らしく、役柄に見事にハマっていました。主人公が抱える闇や故郷であるマンチェスターバイザシーとの関係性は観ていただくのが一番かと思います。

とにかく本作を観ていて感じたこと、それは一度壊れた感情は二度と元には戻らないということ。

一見時間をかければ戻るとか忘れていくとか思うかもしれませんが、それはまだ本当の意味で壊れていないということ。壊れたというと聞こえは悪いですが、喪失感や絶望感といった心に穴が開いてしまったような状況。これって意外に誰にでも一つや二つある気がして、大切な人を失ったとか何をやってもうまくいかないといった状況のこと。

主人公であるリーチャンドラー、彼はそういった心の喪失感から感情の多くを仕舞いこみ、兄の息子であるパトリックも普通に見えて心の底に不安を隠す。この感じが非常に考えさせられるし痛々しい。

壊れたものを元通りに装う、もしくは無かったこととして考えない。それらができたとしても決して完全に忘れ去ることはできない。そういう想いを抱いたまま人生を送って行く。当たり前だけど辛すぎる。人の99パーセントは感情でできているんじゃないかと思う程です。

何のために生きるのかということを強く考えさせられます。

カットも独特な箇所がいくつかあって、個人的には急に次の場面へ突然移るカットや背中から撮るバックショット、言葉は無いけど状況だけが痛いほどに伝わってくるショットの数々。全てが効果的に突き刺さってきました。

ラストの終わり方も冒頭にリンクする形で終わっており、多くを語らず良かったです。最近の映画は多くを語りすぎで、創造性を損なわせる作品が多い気がする。まあその方が動員数とか増えるんだろうけど、本質を見失ってしまっている気がして個人的には何とも言えない感じ。

それらとは対照的に実に感慨深い作品でした。とりあえず余韻を楽しんだ後もう一回観たいところです。