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裁かれるは善人のみ

なんか人生ってやるせないな。わかってはいるけど誰もが蓋をしているところを深くエグってくる作品でした。

「裁かれるは善人のみ」


映画「裁かれるは善人のみ」予告編

実在の事件、数々の書物を基に力強い筆致で描かれる、
世界中の映画祭を席巻し、圧倒し、叩きのめした善と悪の物語!

ロシア北部の小さな街で妻子と暮らす自動車修理工のコーリャ。強欲な市長のヴァディムは、彼らの土地を買収しようと企む。自分の人生の全てともいえる場所を失うことが耐えられないコーリャは、強硬策に抗うべく、友人の弁護士ディーマをモスクワから呼び寄せる……。

とにかく冒頭から大自然の描き方に圧倒される。

今思えば、この「圧倒的な自然=圧倒的な権力の象徴」として描かれていることに気付いてくるのだが。

音楽も最低限に抑えられていて、作品の内容自体に没頭し易かった。逆に言えばそれによって否応なしに残酷な現実と向き合っていくことになるんだけど。

結論から申しますと、本作には夢も希望もありません。ただ描かれているのは我々にも起きうる、もしくは起きている現実だということ。

大自然に対して人が無力なように、巨大な権力に対して個人もまた無力。ここでいう権力は国家権力だったり、宗教だったりするので身近ではないかもしれないけど、誰もが組織であったり、上司、親、社会的地位といった何かしらの権力に抑圧されていると思う。

 その現実の救いの無さを極限まで圧縮した作品になっている気がした。

主人公は徐々に酒びたりになっていくし、段々と覇気も無くなってくる。人って希望があるから頑張れるわけで、それが失われたら何も残らない。それを端的に表現していた気がする。

本作では絶望を感じさせるシーンが何度も登場するが、それも直接的な暴力やグロさといったフィジカルな絶望では無くて、心をエグるようなもっと深い絶望に打ちのめされた。

主人公の収容所に連れて行かれシャッターが閉まるシーンもあそこまでシャッターの重厚さを感じたことは無かったし。

主人公の家が重機で破壊されるシーンなんかも家の中から正面で破壊されていくところなんか、カメラワークも相まって、力への絶望しか感じなかった。

 ラストに近い教会のシーンでしきりにに出てきていた「真実」という言葉。これ自体も真実がどういう事なのかは関係なく、権力があればそれすらも捻じ曲げることが可能なんだと言っているようにしか受け取れなかったわけで。

タイトルは「裁かれるは善人のみ」ということだけど、個人的には裁かれるのは善人とか悪人とか全く関係なくて、属するコミュニティでの権力の無い者、そういうことなんじゃないかと感じた。

中盤で主人公が牧師に投げかけていた通り、「人はなぜ生きるのか」そう思わずにはいられない作品でした。

裁かれるは善人のみ [DVD]

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