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カポーティ

カポーティ

★★★★★

今回は「ティファニーで朝食を」で名声を高めた作家トルーマン・カポーティを題材とした映画、「カポーティ」を視聴。

フィリップ・シーモア・ホフマンの演技と口調が絶妙すぎて最高。とにかく非常に作りこまれた作品。

この映画は、ある殺人事件に興味を示した作家カポーティが取材を行い、小説「冷血」におけるノンフィクションというジャンルを確立させた過程を映画化したものである。

まずカポーティはどんな人間だったのか。映画の中から推測してみる。

冒頭のパーティの様子から、カポーティは白人第一主義である。というよりも1950年代という時代背景がそうした差別観を色濃く反映しているのかもしれない。

また、この時代ではカポーティの格好も奇抜であって、逆に差別の対象としても描かれている。要するに差別し差別されといったこと。

カポーティの凄いところは、それを自覚し、それでも自分を貫いている点にある。現代と異なり、この時代にそれを行うことは非常に難しかったと考えられることから、その姿勢にはスゴイの一言。

「一度聞いたことの94%は暗記している」ということから彼が天才だったこともわかる。やはり天才は凡人にはわからない感覚を持っているのかと考えさせられる。

そして本題の映画の話だが、前提として、この映画に出てくる殺人というのは、カンザス州ホルカムで農家の一家が惨殺されるという事件である。当時としてはかなり衝撃的な殺人事件で、田舎町でそんなことが起こるとは誰も予想していなかった時代であった。そしてそれをノンフィクション小説化したものが「冷血」である。

この映画の特徴として、時折登場する風景のみの映像。そこにおける心象表現の素晴らしさがある。これは実社会に存在し、自らの中に存在する、光と闇、表と裏を表現しているように見受けられる。それは形を変え、都会と田舎といった対比にも使われている。

犯人とカポーティ本人との心情変化も見どころ。

犯人は2人いるのだが、カポーティはペリーという青年に惹かれる。これは特異かつ孤独な雰囲気のペリーに自分自身を投影し、惹かれているのかもしれない。つまり、社会的にある種特異かつ孤独である自分。そして犯罪を犯し社会的に特異かつ孤独となったペリー、特異かつ孤独であるがゆえに同類を求めているのだろう。これはカポーティが幼馴染のネルとの会話の中で、「ペリーと自分は同じ家で育ち、一方は裏口から、そして一方は玄関から出て行ったようなものだ」と言っていることからも同類だと感じていると考えられる。

それぞれの変化は対照的で、ペリーはカポーティをすぐに信用し、カポーティの肖像画を描き、友と呼ぶ。

一方でカポーティは金のためにペリーに取り入り、同調しているようで本当の意味での本音は言わない。小説の最後のシーンを書く場面では、実際の死刑が執行されるまで小説を書くことができないことに気付く、なぜならこれはノンフィクションだからだ。そこで最初は同類だと思い、手助けしていたカポーティだったが、死刑執行を望むようになる。心の片隅では執行されないことも望みながら。

終盤でカポーティにも心の変化が起こり、刑務所を訪れる際の表情に人間味を帯びてくる。

そして最後の再会では他人にどう見られているか気にしないはずのカポーティが、ペリーに自分をどう思っているか、どうしてほしいかといったことを尋ね、涙し、感情を露わにする。天才が俗人化した瞬間でもあった。

死刑シーンも非常に臨場感があった。この演出によりストーリーに一層の重みをが出ていた。

この映画を観て個人的に感じたテーマが「天才と凡人の違い」だった。

カポーティは生まれながらに才能に恵まれ他と比べて特異で孤独だった。こういう言い方をするのは、ある部分では優れていただけであって、全てにおいて優れていたわけではないからである。

天才とは単に「俗人では無い人」を指しているのではないかと思う。

そのためには他との協調を持たず、自分だけを信じ、行動し続けることが必要になる。そういう意味で凡人と本当の意味で同調してしまうと俗人化し、天才ではなくなってしまうのではないかと思う。

だからカポーティはこの後、執筆をしなくなってしまったし、薬物とアルコールに犯されてしまった。

俗人化しないことは非常に難しい。それは当時も現代社会においても同じだと思う。(時代背景から当時の方が一層難しいと思うが)一般社会に逆行した生き方だから。裏を返せば一般社会というのは他との調和を重んじ、特異な行動をしない社会ということになる。

本当の意味で普通とはどういうことなのか、その定義は自分にとって正しいのか、周りに同調しているだけではないのか。 

カポーティが最期に悩んだように、自分自身の生き方の指針を今一度再確認したい。非常に感慨深い映画でした。

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